工事・計画

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JR東海/リニアの総工事費1・5兆円増/難工事対応、地震対策、発生土活用  [2021年4月30日5面]

 JR東海は、2027年の開業に向けて建設中のリニア中央新幹線(東京~名古屋)の総工費を見直した。全体の工事費を精査した結果、国が認可した工事実施計画に見込み額として示した5兆5200億円を約1兆5000億円上回り、7兆0400億円になる見通しを27日明らかにした。工事は鉄道建設・運輸施設整備支援機構への委託分を含む。高架の地震対策などを講じる方針で、仕掛かり中の工事は事業者と契約に基づき設計変更を協議していく。
 東京~名古屋は14年12月に着工した。技術的な難度が高かったり、長期化が予想されたりする工事などから発注・契約手続きを進めた。リスクを見通せる範囲で分割発注した工事がある。品川駅や名古屋駅のように一部の工事は費用が想定以上になるのが分かった。コロナ禍で運輸収入が大幅に減少し、経営環境が悪化していることで、工事費を精査した結果、全体が上振れする見通しとなった。
 難工事への対応で約5000億円、地震対策の充実として約6000億円、発生土の活用先確保で約3000億円の増加になるとみている。駅部は不確実な地質と向き合う区間が多く、地盤改良が必要になった工事がある。一部の地下工事は在来線など既存構造物との位置関係から、施工に厳しい制約がある。水資源を巡る協議から本掘削が行えていない南アルプストンネル・静岡工区や、住民対応などで掘削準備の状態が続く工区があり、現場経費がかさんでいる工事は少なくない。路線本体の契約に至った工事は鉄道運輸機構の委託を含め3月末で65件となっている。
 地震対策は、明かり区間の構造物全体をより安全に強化する考え。山梨リニア実験線の走行試験データの解析や、小牧研究施設の加振試験などから、高架、非常口、機械設備などの安全性を高める。発生土は、約70%の活用先が3月末で確定している。都市部の発生土は、横浜市が進める横浜港新本牧ふ頭の護岸工事で一部利用され、費用を負担する。三河湾でも埋め立て工事に活用される。山岳トンネルの発生土は運搬費や受け入れ費が増える。
 工事費の増加分は、営業活動で得る資金や借り入れでまかなうが、健全な経営と安定した配当が難しい場合は「工事のペースを調整」する。工期を延ばしたなら鉄道事業からのフリーキャッシュフローが増え、工事費の増加に充当できるという。ただ現場の維持費なども増えるため、設計変更協議の行方が注目される。
 JR東海は66%に落ち込んでいる運輸収入が10年度までに100%回復し、1兆円の資金を調達すれば、工事に充当できる資金が増加分を含めた総工事費を同年度中に上回ると予想している。27年開業は「昨年来、難しいと申し上げている通り」(金子慎社長)という状況にある。開業目標は変更しておらず、工事費の増加に伴う工事実施計画の変更申請も予定していない。

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