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スコープ/東証市場再編、22年4月に新区分移行/高いガバナンス必要  [2021年5月7日10面]

 東証による株式市場の再編まで1年を切った。国内外の多様な投資者から支持され、上場している企業のコンセプトをより明確にする狙いで、▽プライム市場▽スタンダード市場▽グロース市場-を新設。9~12月に各企業が市場区分を選択して申請する手続きを実施し、2022年1月に所属区分が公表される予定だ。新年度最初の月曜である同4月4日に一斉に移行される。
 東証によると、流通性が高い企業向けの「1部」に20年12月時点で2187社、実績がある企業向けの「2部」に476社、新興企業向けの「マザーズ」に347社が所属。成長段階の企業らを対象としたJASDAQの「スタンダード」「グロース」を含めると全体で3715社が上場している。
 現在の区分は、各市場のコンセプトが曖昧になっているなど課題があった。上場企業の中長期的な価値向上やベンチャー企業の育成などを見据えて、より適した在り方を検討していた。企業によって経営の方向性や株主構成は大きく異なる。東証は各市場を並列に捉えており、「上場企業として企業価値を向上していくに当たり最も適した市場を選択してほしい」(上場部)としている。
 プライム市場は、海外も含めてさまざまな投資家と建設的な対話をしながら、企業価値向上を図る企業を想定。多くの機関投資家の投資対象になり得る規模の時価総額・流動性を持つことや、より高いガバナンス水準を備えていることを要件としている。流通株式時価総額は100億円以上、流通株式比率は35%以上と設定。現状の1部は流通株式時価総額10億円以上、流通株式比率5%となっており、より高い水準が求められる。流通株式の定義も見直された。上場株式のうち、国内の普通銀行や保険会社、事業法人などの所有株式は、上場株式数の10%未満であっても流通株式から除外される。
 経営成績・財政状態に関する実質審査は、純資産50億円以上で、収益基盤の面で「最近2年間の利益合計が25億円以上」または「売上高100億円以上かつ時価総額1000億円以上」のいずれかを満たすものが対象となる。
 スタンダード市場は、投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向けの市場と位置付けられた。流通株式時価総額は10億円以上、流通株式比率は25%以上となっており、プライム市場に比べて低く設定されている。
 グロース市場は、今後の成長が期待されるベンチャー向けのマーケットとなる。高い成長可能性を実現するための事業計画や、その進捗(しんちょく)の適時・適切な開示が求められる。事業実績の観点からは相対的にリスクが高い企業向けの市場とされた。
 市場再編に合わせて、企業統治指針「コーポレートガバナンス(企業統治)・コード」も改定される。改定案に対するパブリックコメントを7日まで実施中だ。プライム市場とスタンダード市場は全原則が、グロース市場は基本原則が対象となる。
 経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキルと、各取締役のスキルとの対応関係を公表することや、他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任などを掲げている。管理職に女性や外国人、中途採用者を登用するなど企業の中核人材の多様性確保を明記。多様性の確保に向けた企業としての考え方と測定可能な自主目標の設定を盛り込んだ。
 プライム市場はより高い水準が設定されており、独立社外取締役を3分の1以上選任することや、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)や同等の国際的枠組みに基づいて気候変動対応への開示の質と量を充実させることなどが求められる。
 一連の見直しの根底にあるのが変革への姿勢という観点だ。コロナ禍に代表されるように、事業環境はめまぐるしく変化している。そうした中で成長していくために取締役会が機能を発揮し、多様な議論の下で進むべき方向性を見いだしてもらう形だ。適合しない項目がある企業には、理由などの説明が求められる。
 大和証券の寺岡秀明チーフアナリストは、ESG(環境・社会・企業統治)投資が増加している状況を踏まえ、「3分の1以上の社外取締役がいないとガバナンスが不十分のように見られる可能性がある。(投資家からは)プライム市場が優先されるのではないか」と話している。
 コーポレートガバナンス・コードなどの改定の主なポイントは次の通り。
 【1】取締役会の機能発揮
 ▽プライム市場上場企業において独立社外取締役を3分の1以上選任(必要な場合には過半数の選任の検討を慫慂〈しょうよう〉)▽指名委員会・報酬委員会の設置(プライム市場上場企業は、独立社外取締役を委員会の過半数選任)▽経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係の公表▽他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任
 【2】企業の中核人材における多様性の確保
 ▽管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定▽多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況と合わせて公表
 【3】サステナビリティーを巡る課題への取り組み
 ▽プライム市場上場企業においてTCFDまたはそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実▽サステナビリティーについて基本的な方針を策定し自社の取り組みを開示
 【4】そのほかの主な課題
 ▽プライム市場に上場する子会社において、独立社外取締役を過半数選任または利益相反管理のための委員会の設置▽プライム市場上場企業において、議決権電子行使プラットフォーム利用と英文開示の促進。

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