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旭日重光章を受章した建築家・伊東豊雄氏/「しなやかな建築」目指す  [2021年5月26日2面]

伊東豊雄氏

 地方を中心に数々の公共建築に携わってきた。2011年3月に発生した東日本大震災では被災地復興に尽力したのが高く評価されたと認識している。
 東京大学の建築学科に進学し、3年次にオープンデスク(実務体験)で菊竹清訓さん(1928~2011年)の事務所を訪れた。30代という若さで既に頭角を現していた菊竹さんは、生物が新陳代謝する様子を設計に落とし込んだ「メタボリズム理論」の第一人者。その人柄と建築に対する向き合い方に感銘を受けた。65年から約4年間事務所に身を置き、設計のイロハを学んだ。
 独立後は義兄や友人の住宅設計がライフワークだった。自邸「シルバーハット」(東京都中野区、1984年竣工)が日本建築学会賞に選ばれたのもこの時期だ。高い評価を得た「八代市立博物館 未来の森ミュージアム」(熊本県八代市、91年)をきっかけに公共の仕事にも携わるようになった。「せんだいメディアテーク」(仙台市青葉区、00年)は若い世代を中心に大変喜ばれた作品であり、社会に対して建築が与える影響の大きさを再認識するきっかけになった。
 未曽有の被害をもたらした東日本大震災から10年がたった。被災者が集える場を提供しようと「みんなの家」の建設プロジェクトをスタートさせた。ネックだったのは資金や材料の調達。そこで建築文化事業で知己を得た蒲島郁夫熊本県知事に相談したところ、支援をいただくことができた。
 国内の大規模な設計コンペは実績を重視する傾向が強く、狭き門となっている。若手が挑戦しやすい環境を求めていく。建築の在り方にも疑問が残る。経済を優先した結果、利用者が置き去りにされている近代の建築思想を見直す時期に来ている。自然にうまく溶け込み、フレキシブルと優雅さを備える「しなやかな建築」を実現したい。
 設計活動の傍ら「子ども建築塾」を開講している。素晴らしい資質を持った参加者もいる。幼少時の感受性を維持していくかが、新たな発想につながる。次を担う世代の資質を伸ばすのがわれわれの使命だ。

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