JAPICの緊急提言から・1/気候変動による豪雨、待ったなしの対応

2021年3月17日 トップニュース

文字サイズ

 あらゆる関係者が協働で流域治水対策の計画や体制を強化する「流域治水関連法案」が今国会に提出された。事前放流や雨水貯留浸透対策、浸水対策など、ハードとソフトの両面から各種施策の実効性を高めて豪雨災害から国民の生命や財産を守るのが目的だ。治水対策は国家百年の大計。気候変動の影響により年々激甚化する豪雨災害対策は待ったなしの状況にある。同法の施行、推進はもちろんのこと、もう一歩踏み込んだ科学的で継続的な取り組みも必要だ。日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)が昨年末にまとめた「豪雨災害に関する緊急提言」を基に、いま必要な豪雨対策をまとめた。

 2019年10月の東日本台風(19号)。千曲川(長野県)や阿武隈川(福島県)の堤防が決壊するなど関東甲信越地方や東北地方の河川を中心に氾濫・決壊(全国で142カ所)が相次いだ。ちょうど国内でラグビーワールドカップが開催中で、鶴見川遊水地内にある横浜国際総合競技場が試合当日の朝まで洪水防止のために冠水していたのを記憶されている方も多いだろう。この災害では10万棟にも及ぶ家屋が被害を受け、死者・行方不明者数は108人(2020年10月13日の消防庁報告書)にも達した。

 台風上陸時、国が最も危惧していたのが首都圏を流れる荒川の氾濫だ。荒川の水位(治水基準点「治水橋」の水位)は氾濫危険水位(レベル4)を約8時間にわたって上回った。こんな長時間続いたのは観測史上初めてで、もし、荒川が決壊すれば東京東部の低地帯に位置する江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)で、最大約250万人の居住地が水没したかもしれない。そうなればとてつもない被害になっていただろう。

 表1は、国内の年別水害被害額の推移を示したものだ。年によってばらつきがあるものの、被害額がここ数年極端に増加しているのが分かる。その背景には地球温暖化現象がある。日本の平均気温や日本近海の海水温はこの100年間で、それぞれ1・24度、1・14度上昇。日降水量も増え、短時間強雨(1時間当たり50ミリ以上)の発生頻度は直近30年間で約1・4倍に増大している。一般的に気温が2度上昇すると、降雨量は約1・1倍、河川流量は約1・2倍、洪水発生頻度は約2倍になると言われる。  これまで河川の防災計画は過去の降雨や潮位実績に基づいて作成されてきた。このため「100年あるいは50年に1度の洪水」に対応するものとなっていた。だが、異常気象による豪雨対策はそれでは通用しない。局所的に短時間に強烈に降る雨や広域的に大量に降る雨には、これまでとは異なる大胆な対策が求められる。流域治水関連法案もこうした状況を踏まえ「気象変動を踏まえた計画に見直す」方針を打ち出している。

 では、どのような対策が必要となるのか。次回からJAPICの緊急提言で示した具体策を紹介する。連載はJAPICの緊急提言ワーキンググループ(WG)メンバーと本紙が共同で執筆する。