論説・コラム

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回転窓/秋の色彩  [2021年9月16日1面]

 通勤電車の車窓から見える景色も、秋の色が深まってきた。桜並木の葉は緑から黄色に変わり、線路沿いに群生するススキも銀色の穂が揺れだした▼色彩の感覚は人それぞれ微妙に異なり、表現もさまざま。ススキの穂の色も白や黄金などを推す人も多かろう。古くから身近にあったススキは、多くの歌人・俳人らに詠まれた。秋の季語「真赭(まそお)の糸」は穂が赤みを帯びた様を表す▼「名月の出るやゆらめく花薄」〈子規〉。旧暦8月15日の中秋の名月は農業の行事と結び付く。月見ではススキを供えて収穫物を悪霊から守り、翌年の豊作を祈願する意味が込められている▼ススキは生活必需品でもあった。民家のかやぶき屋根には、ススキなどの茎や葉を利用。農村部では秋から冬にかけた農閑期に共同で材料のカヤを集め、屋根の補修やふき替えを行う。屋根材以外に炭俵や家畜の飼料などとしても重宝された▼かつては屋根材を栽培する広大なカヤ場だったが、現在は関東有数のススキの名所で知られる箱根・仙石原。秋の行楽シーズンには多くの人でにぎわう。今も昔もススキは日々の暮らしに彩りを添えている。

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