論説・コラム

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回転窓/歌川国芳の視点  [2021年9月17日1面]

 長髪を振り乱すように踊るとうもろこし。後ろには唄と笛を担当する野菜が控える。江戸後期に活躍した浮世絵師、歌川国芳が歌舞伎役者をモチーフに描いた作品だ。軽やかでユニークなタッチは古くささをまったく感じさせない▼武者絵で人気作家となった国芳は、戯画を得意にした。無類の猫好きで、猫のしぐさとだじゃれで東海道五十三次を表現したり、猫と魚で文字を形作ったりとアイデア豊富な作品を残した▼当時は娯楽を制限した天保の改革の嵐が吹き荒れ、ペリーが来航した激動の時代だった。平安の物語を題材にした作品は幕府を暗に風刺していると大きな話題に▼版元が絵を回収する騒ぎとなったが、かえって人気を呼び高価な海賊版まで出回ったそうだ。卓越した画力と、ユーモアあふれる視点から時代を切り取る構想力に、多くの喝采が送られたのだろう▼今年は国芳の没後160年に当たる。3月に専門美術館が岡山県倉敷市にオープン。東京都渋谷区の太田記念美術館で展覧会も開催中だ。楽しみが抑制され欲求不満が渦巻く昨今。江戸っ子を沸かせた浮世絵で、にやりとしてみてはどうだろうか。

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