日建連意見交換会を振り返る・中/コロナ禍で遠隔臨場導入拡大

2021年6月16日 トップニュース

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 ◇DX推進へ人材育成急務
 新型コロナウイルスの感染予防対策として、国土交通省や高速道路会社の建設現場で遠隔臨場の導入が進んだ。日本建設業連合会(日建連)の田中茂義公共契約委員長は「現場までの移動時間削減だけでなく、書類を事前に確認し、的を絞った効果的な検査ができる」とメリットを強調する。
 自治体でも遠隔臨場に前向きな表明が相次いだ。愛知県は本年度から試行すると明らかにした。先行する高知県では在宅勤務時などにも対応できるよう、出先機関の工事監督職員全員にタブレット端末を配布したという。北海道開発局は発注者からタブレット端末やスマートグラスを貸与する環境を整えた。
 遠隔臨場は現状、材料確認や段階確認にとどまるケースが多い。田中公共契約委員長は完成検査を遠隔で行う場合、「施工者から自主的に発言しづらく、成果をアピールする機会が失われた」と課題を指摘。現場目線での改善を要望した。
 週休2日の実現には生産性向上が欠かせない。ここ数年、継続して議論してきたのがプレキャスト(PCa)の採用だ。日建連は北陸地方整備局が作成したPCa選定フロー(案)を事例に、省人化や工期短縮などコスト以外の効果を評価する仕組みの導入を要望している。
 PCaの有効性は受発注者とも認識しているが、在来工法と比べ割高となるコストが障害となっている。近畿地方整備局はPCaの標準化や選定のための評価指標を検討するため、有識者や関連団体を交えた検討会を設置。来年度にガイドラインの公表を目指す考えを明らかにした。各整備局ともこの動向を注視しており、直轄工事でのPCa採用に弾みが付きそうだ。
 日建連は、自動・自律施工の民間技術を活用したモデル工事の試行を提案した。田中公共契約委員長は「自動・自律化した重機で事故が起きた場合の責任の所在は、今の労働安全衛生法では整理されていない」と指摘。安全基準の確立が必要だと訴えた。茅野正恭公共工事委員長は「こうした新技術が広まれば、従来関心のなかった人にも業界に興味を持ってもらえるのではないか」と、担い手確保の観点からも開発推進の意義を強調した。
 国交省は2023年度までにBIM/CIMを原則適用する方針を打ち出している。日建連の会員調査によると、全体の26%の現場で施工者がBIM/CIMを自主的に活用していた。池田謙太郎インフラ再生委員長は導入の遅れを指摘し、国による活用工事の大幅な拡大を求めた。
 DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するため、受発注者とも対応人材の育成が急務となる。各地方整備局は、地方自治体職員や民間技術者も対象とする研修施設を設置。先行する関東、中部、近畿、九州の4整備局は5月下旬までに運用を開始した。