BIMの課題と可能性

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BIMの課題と可能性・27/樋口一希/金沢工業大学によるBIM利用実態の調査研究・1  [2014年7月31日16面]

図① BIM導入による設計時間の変化

図② BIM対応ソフトでよく利用する機能

 金沢工業大学大学院建築学専攻の中川達心氏による修士論文「小規模設計組織におけるBIM利用実態の調査研究」を、指導教官の下川雄一准教授の了解を受けて紹介する。
 □BIMの本質が問われる中で行われた貴重な全国設計事務所へのアンケート□
 論文上梓は2013年2月。調査は13年1月9日から28日にかけて実施された。
 全国の日本建築家協会(JIA)会員(計4271人)を対象に「建築CAD・BIMに関する意識および利用状況調査」と題したアンケートをJIA設計環境改革委員会(当時、現・業務改善委員会)IPD-WGと共同で行い、設計業界におけるBIMの認知度、普及状況、利用実態などの傾向を集計している。
 特に注目できるのは、既に日常業務にBIMを使用している小規模設計組織(6事務所)にヒアリング(金沢工業大学側で単独実施)を行い、詳細な利用実態や特徴的な取り組み、今後の課題などを整理している点だ。
 上梓後、約1年半が経過したが、小規模設計事務所のBIM環境は大きく変化していない。一方で、BIMがあるタイミングを境に急速に普及すると考えられる今だからこそ、極めて貴重な情報となっている。
 □2次元図面(データ)の重要性再認識などBIM運用の現状を裏付けるヒアリング調査□
 ヒアリング対象の6事務所は、所員1人、4人(2事務所)、5人、8人、11人とまさに小規模設計組織。使用BIMソフトはArchiCAD、Revit Architecture、GLOOBEが2システムずつ。BIM歴は、BIM前システムからの経過も含めて4年から15年。具体的な金額も明記したソフトウエアの契約体系といった極めてナーバスな情報も公表している。
 ◇3Dモデルと連動して抽出を行っている図面の割合=「最近担当した物件の意匠図の85枚中48枚(約56%)を3Dモデルから抽出して利用。抽出できる図面は徐々に増えている」(所員1人)
 ◇詳細図の作成方法=「6社とも2次元CADまたはBIMの2次元機能で加筆、修正」
 ◇BIMモデルに入力する属性情報=「数量表・建具表に必要な情報まで」「紙図面に必要な情報まで。数量表・建具表はExcelでまとめる」「パースやCG作成に必要な情報」
 ◇BIM導入による設計時間の変化=図〈1〉。BIM導入によって起こった設計時間の変化を5段階(作図時間―デザイン検討時間―トータル時間:減った、まあ減った、変わらない、まあ増えた、増えた)で各組織が評価したもの。
 調査実施と論文上梓の背景には、建築に関わる教育機関においてBIMにどのように対応するかという問題意識があるに違いない。下川准教授らは現在、地元の小規模設計事務所と協力し、学生も交えて実際の設計案件にBIMを援用するコラボレーションを行っている。それらの経過は次回で報告する。
 本論文データを希望する方は下川准教授(shimo@neptune.kanazawa-it.ac.jp)までメール送信し、申し出てほしい。提供の可否精査の後、連絡あり。本論文の目次、設問設定を一覧するだけでもBIMの「現状の課題と可能性」を確認できる。BIMのソフトベンダー、ユーザーなどBIMに関わる全ての人に参考としてほしい。
 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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