BIMの課題と可能性

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BIMの課題と可能性・28/樋口一希/金沢工業大学におけるBIM利用実態の調査研究・2  [2014年8月7日]

3次元レーザー計測による敷地と周辺の点群データ

点群データを活用した敷地・周辺の模型制作

 わが国で初めてといえる設計事務所に限定したBIM運用に関するアンケートを基に上梓(じょうし)された論文「小規模設計組織におけるBIM利用実態の調査研究」。明らかになったBIMの課題と可能性をさらに見極めるため、金沢工業大学大学院建築学専攻の下川雄一准教授らは、学生ともども、学窓を飛び出し、地域の有志とコラボレーションする中で、実プロジェクトへの挑戦を始めた。


 □調査研究からの問題意識に基づき実施物件へ 学生主体で実学としてのBIMを位置づける□

 産業としての建築は、最も実学に近い処にある。実学という側面からは、建築教育の中にBIMは本格的には取り入れられてはいない。一部で参照的な「教材」として扱われているだけだ。

 少子高齢化が進む中で教育機関も、学生にどのようなユーザー・オリエンテッドなサービスを提供するのかが問われている。学生の側も、実学としての能力をいかに獲得できるのかを高い優先順位で選択肢の中に入れ始めている。そのような状況下、下川准教授らの挑戦は、文字通りのフィールドワーク、フィージビリティスタディとなっている。継続的に報告するので、産業の側も注視してほしい。


 □新たなデザイン・設計ツールが「ひとつ加わった」とも考えBIMの実態把握から始める□

 取材先の探索や情報収集にFacebookを使用しているが、ある大学の教授を務め、著名な建築家である方のBIMへの疑念表明を目にした。「デジタルツール=BIMで建築の標準化が進むのではないか」「手描きの図面や模型など手触り感が大切」「BIMが使えても設計できるわけではない」等々。

 本稿で明らかとしたように、BIMには大きな可能性と裏腹な課題もある。それでも、2次元CADの普及期と同様、さまざまなデザイン・設計の手法に、BIMという新たなツールが加わったとも考えられないだろうか。アジアに出ていき、アジアから人々を招聘(しょうへい)する際もBIMは共通の言語となる。取材を通して実学という側面から考えると、建築教育の中にBIMを取り入れていくのは喫緊の課題だと考えざるをえない。


 □潜在する地方・小規模組織のBIMへの期待を実践を通していかにブレークスルーするか□

 金沢工業大学Toiro(※)におけるBIMプロジェクトは2013年11月にスタートし、15年度中の竣工を目指している。対象建物は金沢市内の英会話教室の新校舎。新しい挑戦への機会を提供した英会話教室の経営者である施主の英断にも拍手を送りたい。

 参加者も多岐にわたる。同校の非常勤講師を務める建築家の吉村寿博氏、大学院生、下川研ゼミ生、円井研ゼミ生(熱環境解析)、須田研ゼミ生(構造設計)、杉本研ゼミ生(流体解析→風・空調解析)と現時点でも総勢18名からなる。

 本プロジェクトの目的も〔大学の建築設計・BIMに関わる教育力・研究力の向上〕〔設計事務所・建設会社の情報技術利用スキルの向上〕〔会社・地域の特性に合わせたBIM活用法の研究・実践〕〔北陸地域でのBIM利用の普及・活性化〕と明快だ。

 建築家とのプロジェクト内容の確認、施主へのヒアリングに続き、計画敷地の調査、3次元レーザー計測による敷地・周辺形状の取得から本プロジェクトはスタートした=写真。

 ※Toiro=学内で13年度にスタートした地域志向教育研究プロジェクト(全17PJ)。BIMプロジェクトはその一つで、建築系のコトづくり・モノづくりを総合的に学ぶ教育研究プロジェクトとの位置づけだ。

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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