BIMの課題と可能性・45/樋口一希/BIMモデルのFM分野への援用・2

2014年12月11日 トップニュース

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 ファシリティマネージメントの中核をなす長期修繕計画システム「FM-Refine」(FMシステム)の機能概要、BIMソフト「GLOOBE」(福井コンピュータアーキテクト)とのBIM-FM連携で解決できる現況の課題を検証した。


 □図面(データ)からFMに必要な情報を抽出・再設定・再入力している現況の課題が露呈□


 消費が遅れてきた生産であるように、不動産(建物)を遅れてきた建築と考え、時間軸の中で変遷する経済活動=企業組織にも見立ててみる。資本金に近似する建築費=投資などを元手に起業し、収益獲得と再投資を繰り返し、必要に応じてリノベーションも行い、ライフサイクルを終える。

 企業が年次ごとの決算で収支を明らかにするほど、建物は厳密に運用されていないし、「ライフサイクルコスト(LCC)は建築費の3~4倍」とのざっくり感で語られる。FMシステム運用で「ライフサイクルコスト全体の約13%削減可能」という定量的な検証事例が公開されたのも最近のことだ。

 FMシステムを構築する際、現況では、設計・施工時に作成された建物情報=図面(データ)から別途、部位部材や設備機器情報などを抽出し、再入力している。膨大な作業コストもかかるし、専任の担当や組織も必要だ。その結果、竣工後、すぐにシステムを運用すべきなのに、数カ月に及ぶタイムラグが発生する。これら課題解消にBIM-FM連携が威力を発揮する。


 □建物単体のBIMモデルをFMモデル化した後に複数集約して統合データベース運用が可能□


 FM-Refineは建物部材・単価・更新記録同期の情報からなるデータベース・システムだ。建物・電気・空調・衛生・搬送の領域ごとに大中小分類の(ひな形+自由)設定が可能で、それらの情報ごとに振り分けられた数量・単価とマッチングしている。

 部材、機器などの最終更新年に基づき長期修繕計画の立案を行い、グラフ表示を参照しながら次回更新時期の調整を行う。これらの更新シミュレーションを逐次的に行うことで、実績(過去)、予算(現在)、予測(未来)にわたる建物の生涯全費用の計算=シミュレーションが可能となる。

 事業収支計画システム「FM-Balance」のリリースが予定されており、複数不動産(建物)の合算シミュレーションと合わせて、両システムで共通のデータベース運用が可能となる。


 □BIM-FMモデルが持つオブジェクト名称(テキストデータ)をマイニング辞書の参照で集約□


 BIM-FM連携ではマイニング技術が採用されている。BIMモデルからFMのために抽出したFMモデルの部位部材・設備機器には、固有のオブジェクト名称が付加してある。

 各オブジェクトは、マイニング辞書に基づき網羅的にテキストマイニングされ、建物・電気・空調・衛生・搬送の領域ごとに自動分類される。合わせて、分類されたオブジェクト名称に関連付けてデータマイニングし、目的の台帳へ数量と共にひも付き転記する。これによって台帳作成の正確性の向上と、再設定・再入力に要する作業の大幅な削減が実現する。

 FM-Refineによる更新シミュレーションは、長期修繕計画の立案と合わせて、本来、建物の企画段階で検討されるべき将来の長期にわたる資産管理・維持へ向けての対応、建物の劣化状況・予防管理、さらにロングライフビル企画に向けて援用できる。

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)