行政・団体

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「歩切り」は違法、認識広がる/全都道府県・政令市「行うべきでない」/本社調査  [2015年1月5日1面]

都道府県・政令市の「歩切り」の実態

 公共工事の入札で予定価格を根拠なく引き下げる「歩切り」の違法性を、すべての都道府県・政令指定都市が認識していることが日刊建設工業新聞社の調査で分かった。回答のなかった茨城県を除く66団体のすべてが「歩切りを行うべきではない」と回答。歩切りの実施については、「未確認」と答えた3団体を除く全団体が「現在は行っていない」とした。歩切りの存在が指摘される一部市町村などに、違法性を認識する県などが根絶を働き掛ける動きも出ている。
 調査では、都道府県と政令市が発注する工事での歩切りの実態と、その違法性に対する認識についてアンケート形式で聞いた。調査期間は14年12月中~下旬。調査結果によると、歩切りを「実施している」との回答はゼロだった。6割に当たる40団体は「過去も現在も行っていない」と回答。13団体は「過去に行っていたが現在は行っていない」と答えた。10団体は、過去のすべては把握できないが、「現在は行っていない」とした。
 過去に歩切りを行っていた団体にその理由を聞いたところ、大半が「長年の慣習化」と回答。「昔のことで不明」とした団体もあった。多くは慣例的に端数処理を行っていたのが実態とみられる。佐賀県は、「(組織的ではなく)職員個人の判断で最終的に予定価格を封に入れる際に端数を切り捨てていたケースがあった」としている。
 建設業の担い手確保のため、公共工事の受注者が適正な利潤を得られるようにすることなどを目的に昨年、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)や改正公共工事入札契約適正化法(入契法)などの「担い手3法」が成立。適正利潤の確保が発注者の責務と位置付けられ、歩切りは違法行為と明確化された。国土交通省などはこの趣旨を自治体に周知。法改正を機に自治体の意識も変わってきているとみられ、65団体が歩切りを「行うべきではない」と回答。山梨県は「公共工事品確法が施行されたことに伴い、歩切りはできないと認識」と答えた。
 歩切りの定義については自治体間で異なる見解も見られた。歩切りを「過去も現在も行っていない」と答えた団体の中にも、「事務処理の効率化のため、かつては端数を丸めていた」(担当者)とした団体もあった。国交省が昨年、自治体に配布した歩切りの定義や違法性を示したリーフレットでは「事務の効率化のため、設計書金額の端数を切り下げて予定価格を決定」も歩切りに当たると明記している。一方でリーフレットの中には、「その切り下げが、入札契約手続きの透明性や公正性の確保等を図るための合理的なものであり、かつ、極めて少額にとどまるときには、やむを得ない場合があると考えられる」との注釈も入れ、自治体側の事情に一定の理解も示している。
 担い手3法で歩切りが違法行為とされ、昨年10月には国交相と総務相の連名で都道府県・政令市に歩切り根絶の要請文書が出された。これを受けて、各地域では歩切りをなくすための取り組みが活発化している。熊本県は県内市町村に歩切りをやめるよう周知するとともに、建設業者の営業利益率を参考に効果を検証する取り組みを進めている。石川県は、歩切りの実施が確認されていた県内8市町と14年度内に「歩切りを廃止」することで意思統一を図ったという。
 ただ、今回の調査では複数の県の担当者から、歩切り根絶について、「適切な予定価格の設定など入札契約関係の担当者に能力がないと対応できない」「市町村は県に比べて予算の弾力性が小さく、予定価格の上昇などに対応できない」「歩切りが駄目だと言っても、根本要因を解決する仕組みを考えないと闇に潜るだけではないか」などと指摘する声も寄せられた。

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