論説・コラム

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回転窓/幸福感の定量化  [2015年2月16日1面]

 太宰治に「家庭の幸福」という短編がある。自死する前に書いたいわば遺書のような小説だ。敗戦後の日本が、米国流の民主主義をためらいもなく実践することと、男に捨てられた女が玉川上水に飛び込むことが描かれている▼自分の死に場所をあらかじめ小説に書くというのはいかにも太宰らしいが、この小説にはもう一つの主題がある。米国流の「家庭の幸福」こそが「幸福感」の源という考え方への嫌悪である▼太宰は、昨日まで敵だった米国が保護国となり、その国の考え方をすぐ受け入れてしまう日本人に絶望感を覚え、押し付けられた幸福感に反発して死を選んだのかもしれない▼日立製作所グループが先日、集団の幸福感に相関する「組織活性度」を計測できるセンサーを開発したと発表した。集団の幸福感を人の行動パターンから定量化し、その中から生産性の向上につながるデータを「組織活性度」として提供するという▼幸福感を定量化することに驚かされたが、それを生産性の向上につなげようという発想もすごい。何でも定量化される時代。太宰ではないが、ちょっとだけ反発してみたくなる。

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