論説・コラム

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5年目迎える復興現場/俺たちはボランティアじゃない-/条件不利な被災地工事  [2015年3月10日1面]

 東日本大震災から11日で丸4年。建設業界は早期復興を成し遂げようと日々作業に追われている。国土交通省なども復興加速化会議などを通じ、復興工事を円滑に施工するためのさまざまな支援策を打ち出してきた。業界内では、それらが「復興の大きな後押しになっている」(団体幹部)との認識では共通するが、個々にはなかなか思うようにいかない状況もある。復興への使命感と現実とのはざまで苦慮する現場の声を拾った。
 「作業員が足りず、取引のなかった会社からも人を呼んでいる」。ある復興工事の現場担当者の一人はそう話す。品質や安全管理などを考えると、長年の付き合いがある協力会社を使うのが望ましいが、今は選べる状況にはない。それはコストアップにも直結する。ある現場では、現場側の想定と協力会社側の見積もりに開きがあったが、受け入れた。普通作業員への支払いが想定より1日2000~3000円高いこともある。仮に差額が2000円で1日10人が働いたら2万円のコスト増。月25日稼働したら50万円に達する。
 被災地の工事では、積算額と支出実態に開きがある場合、実態調査に基づいて間接費を割り増しする「復興係数」などが導入されている。ある現場関係者は「復興係数などの対策で相当に助かっているが、それでも実態に追い付いていない」と指摘する。「これまでの付き合い方も温度差を生んでいる」と語るのは、ある地域建設業者の社長。いつも協力会社に冷たい対応をしていると、困った時には助けてくれない。「普段の信頼関係が試される。それが商取引というもの」とも。
 今後への不安も募る。交通利便性や労働環境などを考えると、どうしても被災地の工事は敬遠されがちだ。2020年東京五輪に向けて関連の建設需要が盛り上がる首都圏方面へと人材が奪われていくのではないかと多くの関係者が心配する。「条件が不利な被災地の工事にもっと手厚くなるような復興係数を設定してほしい。そうでもしない限り、人が集まらなくなる」。沿岸被災地の行政担当者は不安を隠さない。東京のある建設会社の工事担当者は、被災地への赴任を家族に伝えた際、妻から「お給料は上がるの?」と聞かれた。この会社では、実際は首都圏の方が収入が多く、返答に困った。
 ある地域では、入り乱れる多数の復興事業を円滑に進めるため、既に5月の大型連休までの事業間調整を終えた。4月の人事異動でメンバーが入れ替わっても滞りなく進むよう先手を打った。一方で、混乱が生じかねないケースもある。ある現場では、他地域の地方自治体からの応援職員が発注業務を担当しており、一定期間ごとに交代する。「担当者が代わるたびに方針も変わる。交代のたびに一歩進んで二歩後退となる」と建設会社の担当者は苦笑する。
 震災前に比べると規模の大きな工事を手掛けるようになった会社も多い。利益が出ればよいが、逆の場合は巨額の損失を背負い込むリスクがある。ある現場では、事業間調整などが不十分なまま工事が発注され、現場がフル稼働するまでに半年以上を費やして経費が膨らんだ。この建設会社の担当者は「会社から原価管理を厳しくするよう言われているが、どうしようもない。復興工事は博打(ばくち)みたいなもの」と不満を漏らす。被災地では集中復興期間の行方も気掛かりだ。「(集中期間後の)復興枠がどうなるかで復興スピードが大きく変わる」「復興予算が減れば、これまでのような対応は難しい。一番は予算。それに尽きる」。地元の自治体や業界関係者からはそんな声が聞かれる。
 国交省も動きだした。西村明宏副大臣ら幹部が被災地に直接出向いて自治体などと意見交換を行っており、「さらなる改善を」と業界関係者からも期待の声が上がる。期待は不安感の裏返しでもある。「俺たちは復興ボランティアじゃない…」。ある現場マンがつぶやいた言葉に、被災地の建設現場が抱える葛藤が凝縮されている。

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