BIMの課題と可能性・129/樋口一希/japan-BIM事例フォーラムから

2016年10月6日 トップニュース

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 福井コンピュータアーキテクト(FCA)は、最新版「GLOOBE 2017」(9月14日付)発売を受けて9月27日(大阪)、28日(東京)に「japan-BIM事例フォーラム」を開催した。本稿紹介事例のその後、ユーザー組織「J-BIM研究会」の活動などについて報告する。


 □離陸して5分ほど経過したBIMはエンジンをふかして業界全体で巡航高度を目指すべきだ□


 講演「BIMで建築が夢を見る」。『建築とコンピュータ』誌編集に関わっていた30数年前に「夢見たこと」を凌駕する革新が起こっている。再び建築には、眼前の変化を不可避的なものとして捉え、これからの30年を射程に納めて「夢見るべき」義務と責任が求められている。筆者はBIM応援団として編集者の知見を述べた。

 MITメディア・ラボ創設者、ニコラス・ネグロポンテ氏が語った「東京の自動車を全自動運転車にしたら駐車場はほぼなくなる」。都市計画も激変する。国土の3次元データベース化を目論むシンガポールでは自動運転タクシーの実験を始めた。IoT(Internet of Things)を包含したIoB(Internet of Buildings)進展とともにBIMはプラットフォームとなる。離陸後、5分ほど経過したBIM。パイロットやCAも育ちつつあり、高収益で燃料タンクは満タンだ。今こそエンジンをふかして業界全体で巡航高度を目指すべきだ。


 □業務フロー改善で作業と化していた「製図」自動化+本来の「設計=モデル構築」に専念□


 本稿第65~67回「施主に気づきを与えるBIM」(空創房、一級建築士事務所・畝啓氏)。

 施主との打ち合わせに図面は用いず、3次元パースなどを多用していたが、図面チェックの習慣(不安)から脱却できず、必要時に図面出力していた。業務フロー改善後は、BIMソフト「GLOOBE」の図面生成機能を徹底活用、3次元モデル構築を最優先して工程の最終局面まで図面は出力しない。それによって作業と化していた「製図」を自動化し、「設計」に時間を振り向けられた。BIMモデルの保持で将来の改修ニーズにも対応できるなど、施主との信頼関係も継続的に深掘りできる。BIMの要諦である三つのVのVirtualize(仮想化)、Visualize(可視化)に続き、Venturize(産業化)が視野に入り始めた。


 □「BIMによる業務革新」を設計事務所の側から透かし絵のように俯瞰する東畑版IPD方式□


 本稿第72~74回「東畑版IPD(Integrated Project Delivery)方式の模索」(東畑建築事務所)。

 設計事務所主導で、建設会社とBIM協働し、「設計BIMモデル」を生産設計、施工現場支援まで伸延して「施工BIMモデル」に援用する「早期施工者決定方式」。講演事例から東畑版IPDが実務レベルでの運用に移行しつつあるのが確認できた。

 設計・基本設計とは別途、実施設計と施工を一括で建設会社に発注する設計・施工一括発注方式=DB(Design Bulid)。IPDと対極的にも語られるが、デジタルの側からすれば、ただの陣取り合戦だ。デジタルの優れた透過性、流通性を徹底活用し、「壁を作るのではなく、橋を架ける」べく、BIM業務フローの革新を目指すべきだ。すでに挑戦を始めた建築主も現れた。


 □研究会有志によるユーザビリティテストの結果を実務者目線でBIMソフト新版開発に反映□


 最新版「GLOOBE 2017」開発には、14年、関西・関東の大手企業のBIM担当者を中心に結成され、現在に至る「J-BIM研究会」の貢献度が大きい。実務者目線で問題点を洗い出し、研究会有志によるユーザビリティテストを実施、その内容を研究会で評価、集約してFCAの開発側にフィードバックした結果、今回の改善点は77項目に及んだ。

 合わせて研究会では、合同研修会+成果発表会を開催、企業の枠を超えて、情報共有できる場も提供している。現実的な操作面でのスキルアップのためには、研究会有志のノウハウが凝縮した教材を用いたハンズオン講習会も開催している。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)