BIMの課題と可能性・172/樋口一希/ダッソー・システムズと建築・1

2017年5月11日 トップニュース

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 「エクスペリエンスがビジネスを変革する」をコンセプトに掲げるダッソー・システムズ(Dassault Systemes)。中核的なソリューションである「3DEXPERIENCEプラットフォーム」と建築のデジタル化との関係を通じて「BIMの先へ」を展望する。


 □製造業でのデジタル運用のノウハウのどの部分を建築の側に架橋するのかが問われている□


 3月22日、buildingSMART International(bSI)日本支部のbSJ(旧IAI)第3回施工小委員会においてダッソー・システムズの「3DEXPERIENCE」に関するプレゼンテーションを聴く機会を得た。製造業におけるデジタル運用のノウハウを、建築の実務の中にいかに転用するかの提案が行われた。

 ダッソー・システムズは、航空機設計用の3次元CAD「CATIA」の開発部門を母体に設立され、現在、主要自動車メーカーや重工業、電器メーカーなどを顧客にもつ世界規模のソリューション・プロバイダーとして知られている。建築の側からは、製造業のノウハウをそのままでは適用できないのではとの意見が提示され、議論は白熱したが、自動車メーカーなどを中心としたデジタル運用の成功体験は傾聴に値するものも多い。ダッソー・システムズと建築の側を架橋すべく、ジャーナルとしても、さまざまに模索しつつ、本稿執筆を進める。


 □我が国の建築家のデジタル運用に関する見解が聞こえない中でゲーリー氏の肉声に触れる□


 CATIAの語源は、Computer graphics Aided Three dimensional Interactive Applicationだ。製造業向け3次元CADとして80年代初頭から長い歴史をもつが、建築との関わりについては、15年10月から翌年2月まで開催された「建築家フランク・ゲーリー展」での展示内容で広くフォーカスされた。

 フランク・ゲーリー(Frank Gehry)のデジタル運用に関する肉声は、著書『フランク・ゲーリー 建築の話をしよう』(Barbara Isenberg著:エクスナレッジ刊)を通して聞くことができる。

 「設計段階でコスト管理の基本的な要素となる表面積や床面積、容量なんかを正確に分析できる」「構造も、機械系統も電気系統もわかるし、プロジェクト全体を統括して、建設会社に精度の高い情報を提供できる」(P291)、「コンピュータのおかげで建築家はクライアントのパートナーになれるんだ」(P293)

 フランク・ゲーリーが設計する複雑な形態の建物を造形的、構造的にも成立させるためには、自由度の高い3次元モデリングと構造力学的な解析を行うCATIAのようなシステムが必須だ。施工(製造)においても、曲面が多用されたファサードを構成するパネル枚数などを事前に把握できるため、「建設会社に精度の高い情報を提供できる」わけだ。

 2002年、フランク・ゲーリーは、ダッソー・システムズとの提携を強化し、CATIAの建築分野への積極的な援用を目的にゲーリー・テクノロジー(Gehry Technologies)を設立している。

 「Frank Gehry uses CATIA for his architecture creations」と題する映像で、ゲーリーへのインタビューとともに、ビルバオの「グッゲンハイム美術館」などの3次元モデルも確認できる。

 (https://www.youtube.com/watch?v=UEn53Wr6380)


 □企業はいかにビジネスモデルを変革するのかをテーマに「3DEXPERIENCE FORUM Japan 2017」開催□


 ダッソー・システムズでは、「繋(つな)がる化」が進む今日の世界で、企業はいかにして消費者の要求を素早く理解し、製品の複雑性を管理、ビジネスモデルを変革して組織内の仕事を効率化することができるかをテーマに「3DEXPERIENCE FORUM Japan 2017」を開催する。

 建築・建設にとどまらず、自動車・輸送機械、産業機械、ハイテク、航空宇宙・防衛など各産業に特有の課題を解決する具体的なヒントを、数多くの講演・分科会やプレゼンテーション、展示などを通じて紹介。5月26日午後5時の申し込み締め切りで、公式ブログ上で参加受け付けが始まっている。

  ◇会期:6月6日午後1時(受付開始午後0時30分)・7日午前9時(受付開始午前8時)

  ◇会場:ザ・プリンス パークタワー東京

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)