BIMのその先を目指して・24/樋口一希/サーモパイル型人感センサー導入事例

2017年10月5日 トップニュース

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 オムロンでは、日建設計、東京電気大学(TDU)と協働で人の数を高精度で検出するサーモパイル型人感センサーを開発し、TDUの東京千住キャンパス新校舎5号館に約1000台を納入し、運用を開始した。急速に普及が進むIoT(Internet of Things)の建築分野への応用であるIoB(Internet of Buildings)とも呼べる技術領域への広がりとして注目できる。

 □照明の省エネ制御とともに人数に応じた部屋の換気量の調整ができ空調の省エネが可能□

 サーモパイル型人感センサーは、内蔵したMEMS非接触温度センサー(※)が人体の放射温度を検出することで3.6メートル×3.6メートルの範囲にいる人の在・不在を16分割されたエリアごとに検知できる。256画素の温度データから熱源をきめ細やかに捉えることで高精度な人数の把握が可能だ。人の特徴点を捉えるアルゴリズムを搭載しているので、さまざまな熱源に対して、対象が人なのか、OA機器などなのかを判別することで人数把握の精度を高めている。
 ユーザーは、サーモパイル型人感センサーを導入することで、照明の省エネ制御とともに、人数に応じた部屋の換気量の調整ができ空調の省エネが可能となる。人体の影響を除いた床の放射温度もセンシングすることで人が快適と感じる最適な空調温度も設定でき、省エネと快適の両立が実現する。また、災害時には在室者の位置と人数を把握することで防災面にも貢献する。

 □ヒューマン+環境センサーなどのセンシングの両面から省エネ・快適空間を創造する□

 TDUは、以前から「理工系大学トップクラスの省CO2エコキャンパス」を目指して詳細なエネルギー消費量や設備機器の状態などの把握による省エネ活動に取り組んでいる。
 今回は新校舎の更なる省エネの向上のために、新校舎の設計を担当する日建設計と共同開発したサーモパイル型人感センサーの採用を決定した。
 オムロンでは、サーモパイル型人感センサーをはじめとしたヒューマンセンシングに加えて、環境センサーなどのコンディションセンシングの両面から省エネ・快適空間を創造するスマートビルディングの実現に貢献していくとのこと。
 なお本事例は、17年度空気調和・衛生工学会大会において日建設計より発表されている。サーモパイル型人感センサーの関連技術についてオムロン、日建設計、TDUの3者は共願PATを出願予定。
 主な仕様(項目:仕様)
 ・検出範囲:3.6m×3.6m
 ・設置高さ:2.7m~3.0m
 ・出力:人の在・不在、人数、放射温度、照度
 ・通信インターフェース:RS-485 Modbus-RTU
 ・電源電圧:DC12~24v
 ・サイズ:φ120mm×65mm
 ※MEMS非接触温度センサー=物体から放射される赤外線を受けると、入射エネルギー量に応じた熱起電力を発生する熱型の赤外線センサー。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)