論説・コラム

このエントリーをはてなブックマークに追加 文字サイズ 

シリーズ・国のかたちを考える2018/新潟食料農業大学学長・渡辺好明氏  [2018年4月10日1面]

渡辺氏

 ◇農地の連担化に建設業が存在感
 新潟食料農業大学は「食」「農」「ビジネス」を一体的に学べる新しい「食の総合大学」として、4月に開学した。日本の食は地域と一体になって発展する。農作物の生産から仕分け、加工、販売、運搬、調理、サービスまでを含めた「農場から食卓へ、食卓から農場へ」という循環を、地域社会で創出することも教育上の重要な目標としている。
 日本では少子高齢化による人口減少に伴い、食の消費量が減っていく。しかし、そのまま農地や農業の縮小につなげるのは、健全な国土と地域社会の維持のために得策とはいえない。国内の消費が落ち込むなら、世界に向けて消費量を伸ばすことが肝要だ。
 農作物の国境障壁を下げる政策は、日本にとって不利と見る向きもある。だが、国境障壁は相互主義であるため、障壁が下がることは日本にとっても農作物を輸出する好機となる。政府は19年の農林水産物・食品の輸出額目標を1兆円としている。世界の農林水産物・食品貿易市場は20年には680兆円ともいわれる。日本が食い込む余地は十分にある。
 日本が直面する高齢化問題は、経営者と労働者の二つの視点で考える必要がある。国内のあらゆる産業で経営トップが60歳を超える企業は珍しくない。つまり経営者側の高齢化は全く怖くない。一方で、労働者側の高齢化に伴う人材不足は深刻な問題だ。それを解消するためにも人工知能(AI)など先端技術を活用したスマート農業が大きく注目されている。準天頂衛星システム「みちびき」や衛星利用測位システム(GPS)を搭載した無人トラクターなど、新たな農業機械の開発・商品化が進み、農業が無人化・自動化される環境は整いつつある。こうした世界には若者が積極的に入ってくるはずだ。
 農業機械と建設機械は汎用性が高く、そもそも農業、建設業とも源流は同じとされる。これからの地方創生に向け、一度離れてしまった農業と建設業が再び近づき合う傾向が強まることに期待したい。
 国内で農業基盤改良の余地は多分にある。物理的に量を増やすだけでなく、分散している農地を集約してつなげる「連担化」が求められる。それが実現すればコスト削減、農作物の値下がりにつながり、輸出も容易になる。さらに連担化となれば土地区画整理事業などで建設業界が大きな存在感を示すことになるだろう。
 漁港整備が核となる漁業地域の再生にも引き続き取り組んでいく必要がある。漁港整備を通じた漁業の振興に加え、災害時に大きな役割を果たしてくれるのが漁港建設業者だ。工事が完了したら終わりということではなく、災害対応など多面的な貢献により地域から一層感謝されていくに違いない。
 (わたなべ・よしあき)1945年東京都生まれ。68年東京教育大卒、農林省(現農林水産省)入省。2001年水産庁長官、02年農林水産事務次官、04年内閣総理大臣補佐官、07年東京穀物商品取引所理事長、社長、09年全国農地保有合理化協会会長。4月に開学した新潟食料農業大の学長を務める。

この記事へコメント

メールアドレスが公開されることはありません。

インフラ・ビジネス最前線―ODAの戦略的活用
 途上国や新興国で日本の民間企業が行うイ...続きを読む
建設業で本当にあった59話の心温まる物語
およそ500万人が働く建設業界。それぞれ...続きを読む
作業現場が危ない?!熱中症予防・対策マニュアル
熱中症は、早期の対処で重症化を防げる疾患...続きを読む
中小企業の事業性を向上させる税理士の経営支援
身近な専門家である税理士の支援を受け、中...続きを読む
DVD 道路工事の労働災害・公衆災害
安全教育用DVD「つくる!安全現場の一年...続きを読む