論説・コラム

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シリーズ・国のかたちを考える2018/経営共創基盤代表取締役・冨山和彦氏  [2018年4月20日1面]

冨山和彦氏

 ◇ローカル型産業が主役の時代に
 日本では、大企業が国内総生産(GDP)や雇用を担う割合が下がっている。非製造業のサービス業や観光業、インフラ産業など地域密着のローカル型産業こそが経済の主役だ。非製造業の生産性は低いがその分、伸びしろがあり、潜在力は非常に大きい。
 ローカル型産業は、規模よりも密度が重要だ。例えば、縮んだ方がよい旅館街はたくさんある。100軒を50軒にすれば、無駄な値下げ競争がなくなり、働き手も集中できる。グローバル型産業では規制緩和が生産性や賃金の上昇につながるが、ローカル型産業の場合は同じようにはいかない。独占禁止法は競争を促進させ消費者余剰を最大化させる発想だが、そうすると賃金が下がる可能性が高い。
 むしろ新陳代謝を通じて集積を高めて、良質な雇用を生み出し、賃金を押し上げた方が良い。勤労者世代の賃金が上がれば、地方に若者は帰ってくる。競争論者は嫌うかもしれないが、市場を寡占化し一体経営を進めた方が、地域経済は繁栄する。独占で消費者が害されるリスクもゼロではないが、これから地方で問題になってくるのは、利益が出ないために企業が撤退し、ナショナルミニマムを受けられなくなることだ。全体のバランスを見て、競争政策を考えるべきだろう。
 ローカル型産業の生産性を考えると、インフラの充実が問題になる。現代的な意味でインフラを問い直す必要がある。地方では、中核都市に機能を集約させていくことが生産性と関わってくる。賢く縮むためのインフラの在り方や、メンテナンスが非常に重要だ。廃虚を緑地に戻すような公共投資も必要となる。
 第4次産業革命で、さまざまなところで自動化が進むと言われている。インフラ産業など非定型で労働集約型のローカル型産業こそが、その果実を享受できるはずだ。
 日本では、バブル崩壊後、人手が余る時代が一世代続いたが、今は人手が足りない社会になった。かなり多くの領域で180度発想を切り替えなければならない。ローカル型産業で自動化を進めても反発は起きないのは、人手不足の日本だけだ。現在は例外的な環境にあるが、欧州も中国も追いかけてくる。人工知能(AI)などの開発が世界中で進んでおり、安くてよい物を使いながら、どんどん自動化や生産性を高める技術を磨くべきだ。サービスモデルを確立すれば、ローカルからグローバルに展開できるようになる。今は二重三重にもチャンスなのだ。
 (とやま・かずひこ)1960年生まれ。東京大法学部卒。スタンフォード大学MBA取得、司法試験合格。産業再生機構最高執行責任者などを経て、経営共創基盤を設立(代表取締役兼最高経営責任者)。数多くの企業改革や経営支援に携わる。経済同友会副代表幹事。

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