2019年05月07日 10面

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スコープ/日本SHOKUNIN総研/「人財育成企業」の成長モデル普及へ

「建検パーソナル」レベルの公式テキスト

「建検パーソナル」レベルの公式テキスト

大川氏

大川氏

 日本SHOKUNIN総研(JSi、大川祐介代表理事)が5月から活動を本格化する。大川氏が2000年6月に創業した建設会社・ユニオンテック(東京都新宿区、韓英志社長)の成長過程で蓄積したノウハウを生かし、建設業界を支える中小零細建設会社を「人財育成企業」の成長モデルへと導く。活動の柱は9日に始まる「人財会議」と、年3回行う「建設キャリア検定(建検)」だ。

 □入っては辞めていく□

 建設会社の経営者の多くが直面するのが人材に関する課題だろう。クロス職人から会社を興した大川氏も数年間は、人材が入っては辞めていく現実に悩んでいたという。

 店舗の内装デザインや施工などを手掛けるユニオンテックを経営する中で、顧客には最大限の姿勢で対応していた。一方で自社の従業員には指示を出すばかりだった。

 「やりがいを感じられずにみんな逃げていった」。そんな状況を脱しようと、取り組み始めたのがそれぞれの現場で施工管理を担当する従業員全員への毎日の電話だった。「きょう何時に終わる?」。従業員に向き合おうと、一番遅くなりそうな現場に直接出向き仕事を手伝った。現場の掃除やごみ捨ても率先して行った。

 そんなことを3カ月続けていくと、従業員が同じ行動を取りだし、全員が一番遅くなる現場に集まっては手伝うようになった。その状況は顧客から「チームユニオン」と呼ばれるようになった。

 このことをきっかけに社員がやりがいを持って働ける会社づくりへと思いが変わり、従業員の育成にも力を入れ始めた。具体的に示す行動をクリアした従業員の給料を上げていく人事評価制度も作った。「感動レベル制度」と呼ぶ顧客満足度を高めるやり方や、新規事業コンテストといった活動を通じて、社員のやる気を引き出しながら、収益アップにもつなげていくこともできた。

 □課題解決へ共に学び合う□

 今では130人を超える従業員を抱え、年間37億円を売り上げる会社に成長した。建設会社としての活動にとどまらず、インターネットを活用して元請と職人の出会いの場を提供するIT事業「サスティナ」(https://www.union-tec.jp/service/sustina.php)など活動の幅を広げてきた。

 そんな大川氏が次なる活動として18年10月に発足させたのがJSiだ。自身が直面した経営課題を解決する中で蓄積してきたノウハウを、同じ悩みを抱える経営者と共有。「人財育成企業」を成長モデルとして、月に一度開く経営層向けの勉強会「人財会議」で、直面する課題を解決するために何をすべきかを共に学び合う活動を継続して行う。

 4人で一つのグループを形成し、▽課題の要因を分析・特定する▽課題解決事例を知る▽課題への打ち手を立案する▽考えを発信し意見を聞く▽自社の課題解決に落とし込む-というサイクルで問題解決力を養うのが、人財会議の基本スタイルという。

 これまでプレ会議を数回繰り返してきたが、9日から東京で本格的に始動する。1回40人を最大とする会議を1年間で9回、これを毎年繰り返しながら売上高や従業員数、創業年数を指標に共に成長していく組織を目指していく。

 東京の会議に参加する会社の業態は内装や空調、とび・足場、クロス・床、塗装、大工、大規模修繕、屋根、電気、軽鉄、弱電、設備、セキュリティーなど多種多様。平均すれば従業員数は8人くらいの会社が多い。今後は大阪でも同じように開催するなど、活動を活発化。3年で1000社が参加する組織に拡大させ、各社の成長度合いを評価して表彰する「業界アワードのような制度も作っていきたい」とする。

 □選ばれる職人になる□

 もうひとつの活動の柱となる「建検」は、現場に従事する職人や技術者に共通したビジネススキルを習得してもらうのが狙い。「それぞれの技能は現場で習得する。建検はお客さんに求められ、選ばれる職人となってもらうためのスキルを身に付けることを目的としている」と大川氏。過去2回のトライアル的な試験を経て、6月から本格的な試験を行う。

 受験する際は、大川氏のノウハウを入れ込んだ公式テキストで学ぶことによってスキルを身に付ける。まずは入職1~3年を対象とした「建検パーソナル」から始動。10月にはチームを束ねて仕事をする職長クラスを想定した「建検リーダーズ」の開始に向けた準備を進めている。さらに20年10月には経営層を目指す人材を想定した「建検エグゼクティブ」も始める。

 いずれも試験は6月と10月、2月の年3回。これを定着させて資格者を増やし、いずれは建設業振興基金(振興基金、佐々木基理事長)が運営する建設キャリアアップシステムとの連動も目指していきたいとする。

 本格的に活動を始めたJSi。12月には東京・渋谷で人財会議を拡大させた「サミット」を開催予定だ。建設業界と他産業で人材育成に成功する企業同士が意見を交わすなど、「最先端の『人財経営』を学べる場にしたい」と今から企画を練っている。

 (おおかわ・ゆうすけ)1979年生まれ。静岡県出身。18歳からクロス職人として修行を積み、2000年ユニオン企画創業。04年ユニオンテックに商号変更。現在、代表取締役会長。
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