BIMの課題と可能性・50/樋口一希/鹿島の「Global BIM」・2

2015年1月22日 トップニュース

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 鹿島の「Global BIM」の根幹をなすのは、建設業の生産拠点である施工現場に可能な限り近接してBIMを運用するというコンセプトだ。今後の建設業におけるBIM運用のマイルストーンとなると考えられ、「鹿島BIM」とも呼べる「Global BIM」を概説する。


 □設計施工を標榜する建設会社の典型として「施工BIM」を「鹿島BIM」に置き換えてみる□


 日本建設業連合会から刊行の『施工BIMのスタイル』。「施工BIMの範囲のイメージ」には、従来の施工BIMでは、「実施設計で施工の情報を早期に付加し、施工で活用すること=課題:設計段階ですべての情報は確定していない」→問題解決のために「施工段階で連携して情報を確定させる仕事の進め方に適用」と書かれている。

 施工BIMを鹿島BIMに置き換えてみると、建設会社の目指すべきBIM運用のマイルストーンが透かし絵のように見えてくる。


 □設計と施工部門とのBIMモデル統合に必須だった鹿島仕様のデータ連携ルールの確立□


 14年10月10日号の日経アーキテクチュアの特集「再編される実施設計」。デザインビルド+BIM状況が進展する中で、「実施設計がなくなる日」と題して、設計事務所の立ち位置や設計プロセスが変化せざるを得ないとしている。

 鹿島では設計施工の優位性を活かすべく、施工現場に近接してBIM運用するに際して、設計部門(建築設計本部)との関係を戦略的に再構築している。

 90年代後半から設計・施工両部門でDB CADの運用を開始し、『Architecture=建築意匠』『Structure=建築構造』『MEP=機械・電気・配管設備』の設計データを一元管理するシステムを構築していた。一方で、建設の全工程を一挙に3次元=BIM化するには想定外の時間・マンパワーがかかると考え、直接的に実利が明らかとなる施工部門からBIM運用を開始、それらを設計部門に普遍し、フロントローディングの手法で統合的なBIM環境を構築することとした。

 「LODが話題に上る以前から設計と施工部門とのBIMモデル(データ)統合について、鹿島仕様のデータ連携のルール付けを行っていた。大前提として、工程の最上流に位置する設計部門においてBIMモデル(データ)構築の負担が発生しないようにする。設計は設計本位で、KAJIMA DESIGNを追求する。工程の進展に従い、その後は施工部門でのフロントローディングとしてBIMモデル(データ)の精度、密度、仕様を施工レベルまでに高めていく。具体的には、プロジェクトごとにデジタルモックアップを作り、意匠・構造・設備の担当設計者が作図、調整する中でBIMとの統合へと展開するためのルール付けだ」(鹿島建築管理本部建築技術部担当部長〈生産性向上・BIM責任者〉矢島和美氏)


 □BIMをDBMSとして運用することで産業としての建設業の将来性・可能性を徹底的に追求□


 3次元モデルから大量生産する自動車産業と建設業ではデジタル化の要諦が異なる。多くの建物が一品生産であることを前提としたデジタル化=データベース運用のノウハウ確立が重要だ。

 建設業は、膨大な数の部品・部材・装置を組み合わせるアセンブリ(組立)産業でもある。部品・部材・装置の多くは標準化され、構造材や工法までが一般化され、データベース運用の対象となっている。

 著名な建築家による特異性の強い建物はレアーケースだ。BIM+データベースを援用して、リーズナブルで、高性能な建物をスピーディーに建設する。それが設計施工の優位性であり、建築主への最大のサービスとなる。

 講演資料「Key factors for practical BIM」にVisualization、Relationと共にDatabaseとあるように、BIMをDBMS(データベース・マネージメント・システム)として位置づけるのがキーポイントとなる。

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)