BIMの課題と可能性・156/樋口一希/スターツコーポのBIM戦略・1

2017年3月14日 トップニュース

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 2月27日の日本経済新聞朝刊10面に広告「BIM-FM PLATFORM」by STARTSが掲載された。ヘッドコピーは「建物はすべて、データになる。」。自社のBIM-FM運用で培ったノウハウと知見をベースに新たなサービス提供へと踏み切ったスターツコーポレーションの戦略を紐(ひも)解く。


 □建設業・不動産業を中核にして建物のユーザーである一般市場に向けて専門を開いていく□


 スターツは、一般消費者にも馴染み深い企業だ。不動産の仲介を行っているピタットハウスのテレビCMはよく目にするし、女性読者向け雑誌「OZ magazine」を発行する出版社も傘下にある。雑誌連動型のネットサービス「OZmall」は260万人の会員を有し、フリーペーパー「Metro min.」を発行、東京メトロでも配布している。

 建設業、不動産業を中核にしつつも、建物のユーザーである一般市場に向けて専門を開いていく企業活動を続けるスターツ。あえて一般経済紙で「BIM-FM PLATFORM」サービスの提供開始を宣言した背景には、スターツの強い矜持が感じとれる。

 ヘッドコピーとともに、「しかも、このプラットフォームに乗せた建物は、ビッグデータにつながることに。その建物の価値は見える化され、正しい投資判断へ。ひるがえって、正しい事業計画への活用が可能となる。」と明示されている。明らかに「BIM-FM PLATFORM」の要諦として、建物のユーザーである一般市場が強く意識されている。


 □ビルオーナーを主たるターゲットに新築とともに膨大なニーズが潜在する既設建物も対象□


 「BIM-FM PLATFORM」は、「建てる=設計施工」段階で構築されたBIMモデルを、管理するためのFMモデルへと援用するとともに、経時的な挙動などのビッグデータと連携させて、建物を総合的に管理、運用するコンサルティング・サービスの総称だ。

 繰り返し論考してきたように、BIM普及の要諦は、建物のユーザーである建築主、オーナーにBIMのメリットを定量的かつ具体的に感得してもらうことだ。そのためには、専門内部でのBIM運用を開き、FMへと拡張し、ユーザー側に歩み寄る必要がある。「BIM-FM PLATFORM」は、「建物の価値は見える化され、正しい投資判断へ」と明示したように、第一義的にはビルオーナーをターゲットとしており、合わせてコンペティターでもある建築設計事務所、建設会社、不動産管理会社などとの協働も想定している。新築建物のみならず、今後、膨大な改修ニーズの発生が予想できる既設建物もサービス対象となる。


 □データマイニング技術の採用によって数カ月を要した建物管理台帳の作成をほぼ自動化□


 「建てる」ためのBIMモデルは、「管理する」ためのFMモデルにはそのまま援用できない。それぞれに必須な要素が異なるし、用語・名称も異なる。従来、多くは手作業でマッチングしていたが、非効率で時間もかかりすぎた。

 「BIM-FM PLATFORM」では、BIMからFMへとデータをマッチングしながら、自動的に抽出、移行するデータマイニング(掘り出す)技術を採用している。これによって作成まで数カ月を要していた建物管理台帳をほぼ自動的にかつ正確に作成できる。

 また、抽出され、データベースに格納されたデータと関連する3次元部材をつけ合わせて視認できるビューワー、データと維持管理コスト情報とを紐付けして長期修繕計画などライフサイクルコストをシミュレーションする試算表の作成、設備仕様と関連する3次元部材を組み合わせて算出するエネルギー計算機能などBIM-FM連携に必要な諸機能を装備している。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)