BIMのその先を目指して・67/樋口一希/竹中工務店が支持層を3次元モデル化

2018年9月6日 トップニュース

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 竹中工務店では、直接的には視認できない地中の支持層をBIMおよびICTを活用して3次元モデル化することで、必要な杭の長さを可視化する設計・施工管理システム「ANAGO(アナゴ)」(ANAlysis for Geologic Optimum)を開発、中部国際空港セントレア内の愛知県大規模展示場建設工事の杭工事で初適用し、杭工事に係る品質を確保しながら設計・施工業務の大幅な効率化を実現した。

  □インバウンド需要から活性化が必要な地方空港のインフラ整備のためにBIM・CIMを適用□

 日本政府観光局の直近の推計によると6月の訪日外客数は前年同月比15・3%増の270万5千人で過去最高を記録、上半期の累計でも1589万9千人で前年同期比15・6%増となった。それに伴ってLCC(格安航空会社)各社も増便を計画しており、セントレアにおいてもフィリピン航空が増便、ジェットスター・ジャパンが拠点化を発表している。地方空港の役割強化が喫緊の課題となる中で、愛知県では、新たな交流による新産業の創出と既存産業の充実を図るとともに、首都圏に並ぶ交流拠点を目指し19年9月までに展示面積6万平方メートルの愛知県国際展示場を整備する。

  □追加される最新データで支持層の深さや傾斜を補正して3次元で可視化+杭長を自動判定□

 愛知県国際展示場は、S造2階建て延べ床面積約8万9900平方メートルでセントレアの東側に位置する。埋め立て人工島であるセントレア上に大規模な当該建物を建設するためには約3000本以上の杭を打設することが必須であったが、杭を支える支持層が大きく傾斜しているという問題があった。そのため100本程度のボーリング調査を基に設計者が支持層の深さ分布図を作成しながら全ての杭の長さを事前に決める必要があった。
 一方で杭本数に対し数の少ないボーリング調査を基に支持層の複雑な3次元形状を推定するのは極めて困難で、施工段階で地中の支持層の深さや傾斜が設計想定と異なった場合には、対応する長さの杭を再製作するのに時間がかかることが想定された。
 これら極めて困難な課題を解決するために開発されたのが「ANAGO」で、ボーリングデータと杭の施工結果から判明した支持層の深さや傾斜を日々追加される最新データを基に補正し、3次元で可視化するとともに、その後に打設する杭の支持層までの長さを自動的に判定する。今後、傾斜の大きい支持層での杭工事へ「ANAGO」を活用することで杭の設計・施工の各段階において大幅な効率化を図っていく。

  □自動化によって設計作業時間が80%削減+杭打ち機の施工管理を1人当たり4・0台へ省人化□

 設計段階では、「ANAGO」を杭工事に活用することにより支持層分布図の作成と杭の長さの検討作業が自動化され、これらの設計作業時間が80%削減し、作業の効率化に大きく貢献した。
 図1はボーリング調査などを基に作成された支持層の3次元モデルを用いて「ANAGO」によって自動的に求められた杭の3次元モデルだ。
 施工段階においては、各杭の施工により得られた実際の支持層までの深さを追加し、支持層3次元モデルを日々更新していくことで最新かつ詳細な地盤の情報に基づく杭施工管理が可能となった。
 図2は3000本以上の杭を打設した支持層分布図だ。支持層が複雑に傾斜しており、そのため打設箇所によって杭長さが異なっている。
 追加して打設する杭の長さもタイムリーに変更できるため、1人当たり2・8台だった杭打ち機の施工管理を1人当たり4・0台へ省人化し、杭の発注・施工管理の効率化を実現した。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)