紙面で振り返る平成の歩み・8/8(1996)年/建設市場に国際化の波

2019年2月15日 トップニュース

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 △WTO政府調達協定が1月に発効
 △ISO9000sの認証取得企業が急増
 △「良いものを安く」、高まる公共事業批判
 WTO(世界貿易機関)政府調達協定が1月に発効し、わが国の公共事業市場は本格的な国際化時代を迎えた。国の建設工事は6億5000万円以上、都道府県・政令市の工事は21億6000万円以上が海外企業の参入が可能となった。だが、実際に海外企業が参入する例は少なく、今もその状況は続く。日本の建設市場は建設業者が多く、高度な技術力が求められ、作業員の賃金も高いことなどから、海外企業にとって魅力的な市場とは言えなかったようだ。
 公共事業への一般競争入札が地方自治体に普及する中で、品質担保策が注目された。建設省(現国土交通省)は品質に関する検討会を設け、品質管理・保証システムの国際規格「ISO9000シリーズ」の適用などを検討。この動きを受け、大手ゼネコンらで認証取得する企業が相次いだ。ISO9000sが入札参加要件になるといううわさも流れ、認証取得の動きは地方の中小建設企業にも拡大したが、建設省は最終的に公共工事の入札参加要件にすることはなかった。
 建設業界では数年前から「良いものを安く」という言葉が頻繁に使われた。品質の良いものはそれなりのコストがかかるものだが、これが調達のスローガンように使われた。さらに、この年の後半には「無駄な公共事業による支出が財政悪化の要因」「欧米に比べて公共投資額が多く、コストも高い」などの批判が巻き起こった。どれも認識不足による指摘だったが、その後「公共事業=悪者」という風評が広がり、公共事業の縮減が進んだ。