台風19号-建設コンサルの挑戦・下/通常業務との両立、ICT活用が有効

2019年12月5日 トップニュース

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 働き方改革と災害対応をどう両立させるべきか-。限られた人材の中で、通常業務へのしわ寄せを緩和する手段として、ICT(情報通信技術)の積極活用を訴える声もある。建設コンサルタンツ協会(建コン協、高野登会長)で理事を務める長大の永冶泰司社長は「災害復旧業務に対応するには生産性向上が重要だ」と声を大にする。
 業務効率のアップを目指し、経営資源を投入して技術開発を推進する建コン各社。設計業務にCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を導入し手戻り防止に役立てているケースは多い。人工知能(AI)を活用し土砂災害を予測する技術や構造物の保守点検など、本来は人が行うべき作業を自動化する動きが加速している。
 台風19号の発生により多くの企業が通常業務へのしわ寄せを懸念する中、業務効率のさらなる底上げが「人材不足をカバーする最良の手段だ」と永冶社長は説く。自社のポテンシャルを最大限に生かし、生産性を高めることが「災害対応との両立で鍵を握る」とも話し、作業負担の軽減に伴う「時間短縮につながる」と流れを読む。
 「発注者の信頼も失いかねない」と説く大手コンサル会社の幹部は「発注機関にとって道路や河川工事の完了遅延はコスト増大や地域経済に影響する」と分析。業務効率の改善が期待できるICTを深化し受注者としての責任を果たすべきだと力を込める。同時に発注者の理解も求められる。発注業務の履行期間が年度末の3月に集中しないよう納期を平準化したり、限られた人員でも対応できるよう発注ロットを大型化したりするなどの配慮は必要だ。
 甚大な被害をもたらした台風19号は事前防災だけでなく、担い手を確保・育成する上での教訓にもなる。建コン協の高野会長は「国土強靱化に貢献することは業界の使命だ」と力を込める。その上で「われわれの取り組み姿勢を見たら、若者も興味を持ってもらえるはずだ」と期待を寄せる。働き方改革や生産性向上を進めながら「業界のプレゼンスを底上げし、人材確保につなげる」と訴えている。
 生産性向上や時間外労働の削減などが懸案事項の建コン各社。担い手の確保・育成は受注者だけでなく発注者にとっても避けては通れない課題だろう。両者のさらなる連携が国土強靱化には欠かせない。
(編集部・遠藤剛司)