支える-ゼネコン協力会のかたち・中/キャリアアップシステムで業界の変革促進

2019年12月26日 トップニュース

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◇持続可能な生産体制へ
 建設業では入職率の低さだけでなく離職率の高さも問題になっている。ゼネコン各社の協力会は、会員企業の若手を定期的に集めて集合研修や交流会などを開き、仕事に対するモチベーションのアップに力を入れる。
 大手ゼネコンの協力会幹部は「仕事の厳しさだけでなく、同世代の仲間が周りにいないため、一人で悩んで辞めるケースも多い」と指摘する。業種を超えて会員企業の若手同士の交流を通じて「横のつながりと会社への帰属意識を養っていきたい」と話す。
 建設技能者が現場で長く働き続けるための環境整備も進む。4月から本運用した建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の就業履歴の蓄積やスキルの見える化などによって処遇改善と地位向上を促す。
 担い手の確保・育成を進める上で、ゼネコン各社もCCUSの普及拡大が不可欠と見る。協力会と連携しながら、セミナーを通じて概要や意義の周知を図ったり、相談窓口を設けて登録を支援したりしている。
 準大手ゼネコンのトップは「技能者は自らのスキルをどんどん上げ評価してもらうことで、稼ぐ意識と働く意欲が増す。元請側も労務に関連するビッグデータがうまく活用できれば、調達や現場管理の効率化や高度化が図れる」と見通す。CCUSの導入を機に、業界の旧態依然とした生産体制の変革が進むのではと期待は大きい。
 業界を挙げて普及に取り組むCCUSだが、技能者の登録手続きは思うように進んでいない。大手ゼネコンの協力会会長は「1次下請がメインの会員企業で登録が進む一方、2次以降は関心を示すものの、登録手続きの負担を嫌っている。目先のメリットが実感できず様子見の業者が大半だ」と現状を説明する。
 国や業界団体もCCUSのモデル工事で理解促進に一段と力を入れる。入退場管理システムや建設業退職金共済制度(建退共制度)との連携など、有効活用策の共有にも取り組む。協力会からは優良職長制度やマイスター制度とCCUSの連動など、処遇面でインセンティブが働く仕組みづくりを元請に求める声も目立つ。
 建設現場で働く技能実習生や特定技能外国人などもCCUSへの登録が義務化される。ゼネコン各社の協力会関係者も日本の若者の入職促進が最優先としながら、外国人材の必要性を感じている。2次以降の下請業者に外国人技能者が多いことから、日本人も含めてCCUSへの登録が加速することに期待する。
 ある協力会の幹部は「人それぞれ事情があり、すべての技能者に一律的にCCUSへの登録を強要することには無理がある」と話す。さまざまな意見に耳を傾け一つずつ問題解決を図りながら、ゼネコンと協力会社が一体となり持続可能な建設生産システムを模索する必要性を説く。