練馬城址公園整備・下/閉園惜しむ地元の声、事業計画に一部反映

2021年6月11日 トップニュース

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 区民の憩いの場所だったとしまえんの閉園は、地元に大きなインパクトを与えた。閉園を惜しんだり、公園整備に反対したりするさまざまな声が上がった。公園整備計画の策定の過程でも多くの意見が集まり、一部は公園の整備計画に反映された。
 としまえんは練馬区の成人式の会場として、1978年から使用されてきた。親子2代で成人を祝ったケースもあるという。区が2017年に実施した、区内の好きな場所を質問したアンケートでは2位にランクインするなど、長年区民に親しまれてきたのがうかがえる。
 都が1月28日から1カ月間、整備計画の「中間のまとめ」に対する意見を募集したところ、2425件もの意見が集まった。都の担当者は「ここまで意見が集まった事例は聞いたことがない」と驚きをあらわにする。中でも多かったのが、としまえんにあったプールの存続や新設を求める要望だった。
 「長い歴史がある」「23区に大規模な屋外プールがない」など、プールについて集まった意見は1063件に上る。だが都は「存続や新規整備の予定はない」と明言。都民に開かれた公園として整備するに当たって、プールは利用する季節や時間が制限されることなどを理由として挙げた。一方でとしまえんなどの歴史を伝えるDゾーンに、水辺空間や水遊び場を設ける方針を、意見も踏まえ整備計画に追記した。
 「としまえんの面影を残した公園としてほしい」といった、としまえんのレガシー(遺産)を受け継ぐ明確なコンセプトの設定を求める声も多かった。整備計画の中には「『としまえん』の記憶を伝える遊具広場」と、中間のまとめに明記がなかったとしまえんの文字が追加された。
 中間のまとめの意見募集に合わせて、区は都に意見書を提出した。地元の声を踏まえた整備計画への要望のほか、設計、着工といった事業の節目ごとの近隣住民への説明、今後の社会情勢の変化に伴う必要に応じた計画の見直しなどを求めた。
 区の担当者は「(としまえん閉園の)反響は本当に大きかった。閉園を疑問視する厳しい声も多かった」と振り返る。都が策定した整備計画には「地元の要望が一定程度取り入れてもらえた」との考えを示す。今後も「すべての希望に応えるのは無理かもしれないが、住民の意見をしっかりと都に伝えていきたい」と、事業がスムーズに進むよう地元自治体として橋渡しの役割を担っていく。
 閉園から半年以上がたっても、かつてのとしまえんの正門の前で足を止め、名残惜しそうに写真を撮影する人を多く見かけた。それだけたくさんの思い出が、としまえんには詰まっている。90年以上の歴史が紡いだ数々の思いを継承しながら、地域に安全とにぎわいをもたらす新たな公園の完成に期待したい。(編集部・出村一晃)