BIMの課題と可能性

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BIMの課題と可能性・161/樋口一希/日建設計の内部設計支援組織・2  [2017年3月30日]

「建築とコンピュータ」(1983年5月):ザイネティックス社のXYプロッタ。和紙使用で鉛筆の濃淡にもこだわっていた

 「建築とコンピュータ」の業際においてインターフェイスとしての役割を担う日建設計の3DC(Digital Design Development Center)+DDL(Digital Design Lab)。新たな職能としての「立ち位置」を報告する。


 □建築設計のデジタル化を選択的な変化から不可避的な変化へ向かうプロセスとして捉える□


 81年後半、日建設計取材時のヘッドコピーは「設計者はいつコンピュータ部を訪ねたのか」。当時は建築設計のデジタル化の黎明期で、BIM的概念を持ちつつ、3次元モデルを構築してもインタラクティブに操作もできない。成果物は2次元図面で、プロッタの鉛筆の濃淡から和紙の使用にまでこだわっていた。

 そのような状況下、コンピュータでなければ「できない設計領域」「利用した方が良い設計領域」に気付いた設計者の中から積極的にコンピュータ部を訪ねる者が現れ、「建築とコンピュータ」を架橋する新たな協働が始まった。

 現在に至る日建設計の30数年間の偏位は、建築設計のデジタル化が選択的な変化から不可避的(Inevitable)な変化へと向かうプロセスとして測定できる。先駆者たちの挑戦は、「建築とコンピュータ」の「業際」をつなぎ、双方を通底するインターフェイス=新たな職能としての3DC+DDLへと引き継がれていった。


 □建築内部で実務面で設計者を支援する3DCとR&D的に先端的な研究と開発を行うDDL□


 3DCとDDLの役割分担を概説する。3DCは設計者をユーザーと呼ぶことからも推し量れるように、建築内部において実務面で設計者を支援し、協働する。DDLは建築外部との協働も含むR&D(Research and Development)的な活動を通じて先端的な情報、技術、ノウハウを建築内部へと還流させる。

 本稿第8~10回「組織設計事務所のBIM」で報告したように、全社的な方針としてはBIMソフト「ARCHICAD」(グラフィソフト)が採用されており、直近のエポックとしては3次元モデラー「Rhinoceros」(アプリクラフト社)の実装も進むなど、設計者のデジタル環境面の整備は完了している。一方で、2次元CADからBIMへの移行では、設計者はいかにして3次元モデルを構築するかの課題解決を迫られる。2次元CADでの設計行為が一面で「絵を描く」ことであったのに、BIMでは建物を構成するI=Informationを意識せざるを得ないからだ。3DCでは、設計者がBIM=Information構築をしやすくするとともに、精度の高い図面出力を可能とする仕組みづくりを行い、合わせて関連する各種ツールを整備している。


 □設計支援ツールの整備などのBIM状況進展で設計者がモデル作成するケースが増えている□


 設計者は、基本設計から実施設計までプロジェクトごとのニーズに応じたタイミングで3DCに支援を依頼してくる。依頼内容は、先端的な技術を必要とするものから容易なものまで混在しているため、3DC側で解決策を精査し、振り分け対応する。従来手法では解決が難しいケースや原初的なアイデア段階で対応策が未確定の際にはDDLが対応する。

 現状における実務工程は、「設計者が使えるパラメトリックなモデルを作り、設計者はパラメーターのみを調整」「整備済みのツールを用いて設計者自らモデルを作成」「最終的なアウトプットまでをワンストップで提供」に大別できる。

 BIM状況の進展に伴い、設計者自らがモデル作成するケースが増えている。BIMによる三つのV(Visualize+Virtualize+Venturize)が設計者に技術の射程を伸延できると気付きを与えるからだ。Visualizeされた情報は専門内部でも情報共有の質を劇的に改善する。Virtualizeされた情報は可用性、流通性に優れ、工程間、組織間をやすやすと超えていく。近年、注目が集まっているVenturize。設計段階でデジタル化された建物情報は、「建てる」=施工を超えて「管理する」=FMから「経営する」=PM(プロパティーマネジメント)へと援用され、新たなビジネスチャンスを創造する可能性を持つからだ。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)

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