支える-ゼネコン協力会のかたち・下/人的資源の流動化で体制再構築

2019年12月27日 トップニュース

文字サイズ

 ◇プロ意識低下を危惧
 生産年齢人口が減少を続ける環境下で施工体制を維持するには、協力会社を含めた現場のサプライチェーンの再構築を進める必要がある-。
 準大手ゼネコンの社長は元請側の技術者と協力会社など下請側の技能者を、仕事があるエリアに振り分ける「人的資源の流動化」がこれまで以上に求められると見ている。
 多くのゼネコンは支店・支社単位で協力会の支部を設けており、ある地区で作業員や資機材などが不足した場合は他地区の支部が支援する協力体制を敷く会社も少なくない。全国で災害が頻発する昨今、元請と下請という縦方向の結び付きと、協力会の会員企業間という横の結び付きの強さが、非常時の対応力の増強につながる。 
    中長期的に先行き不透明な建設市場で競争を勝ち抜くため、ゼネコン各社は協力会社との関係強化に一段と力を注ぐ。ここ数年、協力会社の経営支援の一環で、手形サイトの短縮や現金化など、支払い条件を改善する動きが活発だ。
 協力会社の技能者の育成支援でも研修環境の整備・拡充に積極的に取り組む。他社の模範になるような採用・育成活動や業務改善の事案に元請側が助成。優れた取り組みをモデル化し、水平展開している。
 「受注産業では仕事量の調整や平準化が難しく、暇になると職人は逃げてしまう」と話す大手ゼネコンの協力会会長は、技能者の多能工化の必要性を強調する。ゼネコン側も協力会と連携し、多能工の育成に取り組みだした。あるゼネコンの社長は「地域間で仕事量が違う。都市部は人が多く、労務を手当てしやすい。多能工の需要は仕事が薄く、職人の絶対数が少ない地方で高くなる」と話す。
 ゼネコン各社の幹部からは「休みや給料など、あらゆる面で改革を進めていかないと、技術者・技能者が建設業に入ってこなくなる」「職人に休暇を取らせるためにかかったコストは支店レベルで支援すると協力会社に伝えている」との声が聞かれる。技能者が安定的に働ける環境整備の一環で、月給制の採用を協力会の会員企業に働き掛ける動きも出てきた。
 末端の現場作業員まで処遇改善を図るには、何より適正な工期と利益を確保する必要がある。大手ゼネコンの社長は「競争激化はやむを得ないが、建設需要が縮小してダンピング受注が横行すれば、日本の建設産業は終わってしまう」と警鐘を鳴らす。
 ある協力会トップは「昔に比べて暮らしへの危機感が薄まった日本社会では、働き手のプロ意識も低下傾向にある」と危惧する。ゼネコン、協力会社ら現場を支える関係者が問題意識を共有し、同じ方向を向きながら働き手一人一人の生産性を高める。硬直化した建設生産システムの見直しは待ったなしの状況にある。
 (支える特別取材班)