練馬城址公園整備・上/都市計画決定から60年、23区最後の都立公園整備実現へ

2021年6月9日 トップニュース

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 「東京都区部に最後に残された事業未着手の都立公園」(中島高志東京都建設局長)の整備事業が新たな局面を迎えている。都が練馬区で計画する練馬城址公園は都市計画決定を受けてから60年以上が経過。整備計画が5月にまとまり、8日付で国土交通省から事業認可を取得した。周辺地域の一大防災拠点を構築する事業が本格始動する。(編集部・出村一晃)
 練馬城址公園(春日町1向山3、区域面積約26・7ヘクタール)の整備は、1957年に都市計画決定が告示された。都の担当者は「高度経済成長期で市街地化が進むと同時に、オープンスペースの確保のため多くの広場の整備計画が浮上した時期」と時代背景を説明する。だが区域内では遊園地「としまえん」が既に営業していたことなどから、着工することなく現在に至った。
 事業実現への動きを活発化させたのが、2011年3月の東日本大震災だった。大災害発生時に避難できる防災拠点の形成の重要性が高まった。震災発生から間もない同12月、都は「都市計画公園・緑地の整備方針」を改定。およそ22ヘクタールの区域で新たに事業認可取得を目指す「優先整備区域」に位置づけた。
 緊急車両の動線の確保、防災用照明や震災対応トイレといった機能の配置、災害時にヘリコプターが離着陸できる広場の設置など、整備計画には地域の防災性を高める施策を多く盛り込んだ。区域中央を流れる石神井川、川沿いに並ぶ桜やヒマラヤスギといった樹木など、現存する自然を生かした緑地空間の形成も掲げた。
 もうひとつ大きなコンセプトとして、土地の歴史的背景の活用を挙げた。計画地には平安時代から室町時代にかけて勢力を持っていたとされる武家の豊島氏の居城「練馬城」があった。都は現存する地下遺構を、旧跡に指定している。としまえんの名称も豊島氏に由来する。
 整備計画にあるA~Eの五つのゾーンのうち、Dゾーン「人々をつなげ歴史を伝える文化ゾーン」で、練馬城の地下遺構を保全しながら噴水の修景施設を設け、地域の歴史を伝えるエリアの配置を掲げた。としまえんの記憶を伝える遊具広場の整備も明記した。
 23年度に、A~Cゾーンの一部を先行開園。としまえんのプール跡地となるDゾーンを避難場所として機能させた後、29年度に開設する。Eゾーンは、映画「ハリーポッター」シリーズの「スタジオツアー施設」の30年間の運営終了後に公園として整備し、全体開園を迎える。小池百合子都知事は1日の都議会定例会で「地域の歴史や豊かな緑を生かしながら、都民が安らぎ防災拠点ともなる公園を造り上げていく」と意気込んだ。
 公園計画地の大半を占めるとしまえん跡地は、西武鉄道が所有している。整備に当たり都は、同社と土地の取得に向けた協議を進めている。都の担当者は「事業の重要性をご理解頂き、協力してもらえると考えている」と話す。