風をつかむ-識者の視点・4/経済産業省資源エネルギー庁省エネ新エネ部・茂木正部長

2021年6月25日 トップニュース

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 ◇新技術開発の挑戦環境づくりに意欲
 洋上風力発電の導入拡大にはコスト低減や部品製造など国内産業の育成が不可欠といえる。政府は2兆円規模の「グリーンイノベーション基金」を創設。課題解決につながる技術の研究開発と実証を後押ししている。洋上風力を含め再生可能エネルギーの普及を主導する資源エネルギー庁の茂木正省エネルギー・新エネルギー部長は、日本企業が新技術の開発に挑戦できる環境づくりに力を注ぐ。
 --洋上風力発電の案件形成が進展している。
 「2019年に施行された海洋再生可能エネルギー整備法(再エネ海域利用法)に基づき、初弾の長崎県五島市沖で事業者を特定した。秋田県と千葉県の沖合にある4区域は、5月末に応募を締め切ったところだ。初弾よりも規模が大きく価格競争もあるため、4区域が実質的な第1ラウンドになる。年内には事業者を決め着実にプロジェクトを推進したい」
 「案件形成を加速するポイントは国が主導し、風況や海底地盤などの調査、系統の仮確保をパッケージで行う『セントラル方式』だ。今年は3海域で実証事業に取り組み、数年以内に方式を確立したい。国内のサプライチェーン(供給網)構築やアジア市場への展開を見据え、部品など関連産業の育成にも力を注ぐ」
 --導入拡大の課題は。
 「洋上風力発電は適地が一部地域に偏っている。偏在性の解消には送電網の整備が不可欠だ。海底直流送電を含め、適地と需要地をつなぐ基幹送電線の計画を検討中で、22年度にマスタープランとして打ち出す。地元との調整や合意形成も重要になる。地域の関係者や地元自治体、国の関係省庁がしっかりタッグを組み一つ一つ丁寧に案件を形成したい」
 --検討中の次期エネルギー基本計画も含め今後の展開を。
 「30年のエネルギーミックスはまだ結論が出ていないが、洋上風力を含め再エネを最大限導入する方向は確認している。関連政策の裏付けで再エネ発電量を30年に2900億キロワット時(18年1853億キロワット時)と試算した。各省と協力しながらさらに積み上げる。導入量を増やすため国全体で投資して送電網などのインフラを造り替えなければいけない。20~30年先に再エネを中心としたエネルギー供給体制をつくるため、産業界も一緒に投資してほしい」
 「洋上風力発電はさまざまなビジネスチャンスがある。建設業界もこれまで本業で培ってきた技術力や知見、人材を生かしチャンスをものにしてほしい。風車の施工やオペレーション、維持管理など各工程で請負業者になるのではなく、プロジェクトマネジメントという広い視野での活躍に期待している」。