風をつかむ-識者の視点・8/丸紅洋上風力開発・真鍋寿史社長

2021年7月12日 トップニュース

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 ◇案件絞り国内シェア10%狙う
 丸紅は国内外で洋上風力発電事業のさらなる参画・運営を強化し、国内のシェア獲得に意欲を見せる。洋上風力発電関連プロジェクトの開発に取り組む丸紅洋上風力開発(東京都千代田区)の真鍋寿史社長は、事業を進める上で必要な港湾などのインフラ整備の重要性を指摘する。
 --丸紅の洋上風力発電事業の方針は。
 「日本は2030年に洋上風力発電で10ギガワットという目標を掲げている。社内的にはマーケットシェアの10%、1ギガワットを狙う方針だ。現在丸紅が筆頭株主として出資する秋田洋上風力発電が秋田港・能代港(秋田県)で建設工事を進めている。今後かなりの確度で入札に勝たないと目標の達成は厳しいだろう。20年代後半には案件が出てくるとみるが、しっかりと勝率が高い案件に絞って取り組んでいく」
 --事業を進める上では漁業関係者との協調が不可欠になる。
 「現状の入札制度では最終的な段階で漁業関係者の意向が反映されにくい仕組みになっており、改善が必要だ。地元のことをあまり考慮しない事業者が価格勝負で選定されるリスクもあり、全国の漁業関係者にとって洋上風力発電事業が受け入れがたいものになることを懸念している。確かに地元との調整は大変だが、当社としては丁寧に対話することで互いにウィン・ウィンの関係を築けるように模索していくスタンスだ」
 --施設を建設する上での課題は。
 「施設の建設に必要な港湾などのインフラ整備が重要な課題だ。港湾整備は国と地元自治体が連携して進めるが、整備費用を事業者が払う仕組みについて自治体担当者への理解が浸透していないと感じる。結果的に手続きに時間がかかり、事業の建設準備に間に合わないリスクもある」
 「建設に携わる人材も不足している。日本には洋上風力発電施設建設の経験があるクルーがいない。経験の浅いクルーは安全面でも課題があるため、時間をかけて育成していく必要がある。現場で問題が発生した際に対応ができないと、1日待機するだけで何千万円というコストが発生してしまう可能性がある」
 --施設の建設に当たっては十分な安全対策が必要だ。
 「洋上の工事は陸上と比較して事故などのリスクが格段に高いが、施工者側の施設建設の経験が豊富ではない。一方で工事上のリスクをしっかり認識している事業者ほど安全対策にコストをかけるため、価格競争力を失うことになる。安全対策を重視した事業者が入札でどう評価されるのかは、今後注視するポイントだ」
 --施工者に求めることは。
 「やはり海外と比較すると建設コストが高い。日本はゼネコンのほかにマリコン数社程度しか洋上風力発電施設の整備に対応できる施工者がいないため、競争環境がまだ構築されていない。将来的に洋上風力発電を国の輸出産業にすることを考えると、コスト競争力をさらに高める必要がある」。