建設業のDXを官民ともに推進する直近の動向を国土交通省のBIM/CIM推進委員会と長谷工グループの最新事例から報告する。 □BIM/CIM原則適用に向けて集中検討する5課題を設定-BIM/CIM推進委員会□ 国交省はBIM/CIM推進委員会の第8回会合を8月30日に開催、2023年度までを目途としたBIM/CIM原則適用に向けて、小規模事業者においても遅滞なくBIM/CIMを援用できるようにするべく集中的に検討する5項目を設定し公表した。 対象を小規模事業者と明示した背景としては、今後、BIM/CIM援用に未経験の小規模事業者への対策が重要であるとし、そのためにさらなる具体化が必要な事項として建設生産システムに必須なデータを特定、引き継ぎ機能を強化することなどを列記している。 年度内に集中検討する5項目は、▽後工程に必要な情報伝達の検討▽3次元モデルのデータ引き継ぎ▽作成レベルの整理▽発注者・受注者としての効果・活用方法の検討▽教育、能力開発-である。 BIM/CIMの原則適用に際して、さらに長期的にはBIM/CIMによる「大量の電子データの同時共有」の特性を生かした制度などの検討が必要だとしている。具体的には、紙資料や簡単な電子データのやりとりのみを前提とした建設生産システムの制度・慣習を、大量のデータの即時共有が可能となった現状および近未来の技術を前提として変革していくとしている。 BIM/CIM推進委員会は、近年、国際的にもBIMを巡る動向が顕著な進展を見せる中で、Society5・0における新たな社会資本整備を見据えて、3次元データを基軸とする建設生産・管理システムを実現するため産官学一体となった議論を行う目的で設置された。18年9月3日に1回目が開催されている。 □対象をグループ全社に拡大し「イノベーションリーダー育成プログラム」実施-長谷工グループ□ 長谷工グループは、DX人材育成強化の一環として「DXアカデミー」プロジェクトを開講しているが、今般、対象範囲を長谷工グループ全社に拡大し、8月26日より「イノベーションリーダー育成プログラム」を実施すると公表した。 イノベーションリーダー育成プログラムによって社員がデジタル知識を身に付け、DX推進に向けたリーダーとなることで、それぞれの会社・部門のDXを推進する。長谷工版BIM&LIM(※)など独自のDXを積極的に推進することによって商品・サービスの競争力強化や生産性向上に革新的に取り組み、新たな事業モデルの創出を目指す。 長谷工版BIMの一事例としては、連載第71回(8月18日付)で設計データとビジュアルプログラミングツールであるDynamoを連携し、コンクリートの立方メートル数を自動算出するシステムについて紹介している。 DXアカデミーは、中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan」(NS計画、20年4月~25年3月)で重点施策となっているDX教育の一環として、東洋大学情報連携学部(INIAD)の坂村健学部長・教授の協力の下、開講している。 第1弾は21年11月に長谷工グループ全役職員約8000人を対象に、意識改革とDX知識習得のための「DX意識改革プログラム」として実施した。それらの結果を参考に第2弾として、長谷工コーポレーションと長谷工アネシスの中堅・若手社員からDXリーダー社員を選抜し、今年4月から5月にかけて「イノベーションリーダー育成プログラム」を実施した。そこではDX・ITなどに関する基礎知識やプログラミングの実践学習を通じた学習機会を提供し、デジタルを活用した業務改革・サービスに関する具体的な検討・提言を行っている。 (※)LIM(Living Information Modeling)=BIMデータを援用して入居者のライフサイクルや建物・設備の状態と利用状況などの情報を一元化する仕組み。 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)