鉄道各社の展望-開業150年-/小田急電鉄/新宿駅西口に260メートル超高層ビル

2022年12月28日 ニュース

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小田急電鉄は東京・新宿から南西方向に路線を延ばし、東京郊外に位置する町田や相模原からの通勤需要を担ってきた。小田原線の都心寄りでは計画から半世紀、着工から30年以上の月日をかけた複々線化工事が完了し、輸送力の増強を実現した。同社最大のターミナル・新宿駅の西口では小田急百貨店新宿店本館などを高さ約260メートルの超高層ビルに建て替える大プロジェクトも進展している。
小田原線の複々線化事業は東北沢駅~和泉多摩川駅間(総延長10・4キロ)を対象に、東京都施行の連続立体交差化事業を兼ねる形で実施。2019年3月にようやく全区間の事業が完了し、ダイヤの増発や速達性の向上につなげた。
地下化した東北沢駅~世田谷代田間では、地上線路跡地を活用した街づくりプロジェクト「下北線路街」(東京都世田谷区)を推進。低層の建物に個性あふれる店舗や保育園、学生寮などを多く誘致した。地域の魅力を尊重しようと地域住民を街づくりの主役に、開発側の小田急が後方支援に回る「支援型開発」は新たなエリアマネジメントの手法として各方面から注目を集めた。
本年5月の下北線路街の全面開業に当たり、同社の星野晃司社長は「地域の方とともに、イベントや新たな事業を成功させて下北沢をより魅力ある街にしたい」と述べた。サブカルチャーの街として広く知られる下北沢の環境が生み出した街づくりの新たな概念。ほかの沿線地域で進める街づくりでも「支援型開発のエキスを取り込んでいきたい」と語った。
ターミナルの新宿駅西口でも巨大プロジェクトがいよいよ本格化する。駅舎に直結する形で営業していた小田急百貨店新宿店本館。店舗が入っていた建物は小田急グループのシンボルだったが、建て替えに向けて本年10月から解体工事が始まった。東京メトロらとの共同で延べ約28万平方メートルとなる複合高層ビルを建てる。260メートルの高さは東京都庁を超えることになる。
新築ビルの高層部にはオフィス機能、中低層部には新たな顧客体験を提供する商業機能を設ける。来街者と企業の交流の場となるビジネス創発機能も導入する。建て替えプロジェクトの全体完成は30年3月を見込んでいる。
重要拠点である新宿エリアの魅力アップに向け、先端技術を生かした新たな施策にも取り組む。新宿駅西口に11月、現実世界と仮想空間を融合させたコンテンツ「XR」(クロスリアリティ)をテーマとした施設を開業した。今後の展開として、XRと特急電車「ロマンスカー」を組み合わせた施策などを視野に入れている。
江ノ島や箱根のような高い集客力を誇る観光地が沿線に立地する小田急電鉄だが、「箱根ロープウェイの乗車中にXR技術で恐竜の世界を味わってもらうといった新たな体験を提供できるかもしれない」(広報担当)と期待する。コロナ禍で集客や移動に対する価値観が大きく変わる中、XRをリアルの価値を高めるテクノロジーとして活用していく考えだ。