鹿島/斜杭式桟橋・係留施設の上部工をフルPCa化、海上の工事期間を半減

2025年6月3日 技術・商品 [3面]

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 鹿島は、海底に杭を打ち込んで設置する桟橋と係留施設(ドルフィン)の施工効率化に向け、上部工をフルプレキャスト(PCa)化する新たな工法を開発した。陸上で製作した上部工コンクリートと斜杭の頭部を接合できる構造にし、設置作業の負担を減らす。風や波浪、潮位といった環境要因に左右されず施工できるため、工程の遅延も防げる。同社の試算によると、従来工法とほぼ同コストで、海上工事期間を50%、全体工事期間を15%短縮できるという。
 「クロスパイルピア工法」として、沿岸技術研究センターの「港湾関連民間技術の確認審査・評価事業」の評価証を取得した。海上に斜めに打設した鋼管杭の上部に仮受管を設け、PCa上部工を起重機船で一括で架設できるようにする。
 斜杭は直杭に比べて接合部の孔が大きい。強度を確保するための海上作業が必要で、施工時間の長さが課題だった。新工法では、鋼管杭の内部にはPCa側から接合管を挿入し、上部工コンクリートと斜杭の頭部を接合。仕上げの工程で、斜杭の頭部に無収縮モルタルやコンクリートを充填し、上部工との一体性を高める。
 水位が下がる干潮時まで待機する必要がなくなるため、工程の遅延を減らせる。波浪によって足場や型枠が損傷するリスクを低減し、施工効率の向上も期待できる。鹿島の試算によると、現場作業に必要な人員を20%、二酸化炭素の排出量も10%削減できるという。
 工事以外でもメリットは大きい。海上でのコンクリート打設量が減るため、水質汚染を防げる。工程の短縮で海域の占有期間が減るため、周辺の船舶の航行や漁業操業への影響も最小限に抑えられる。