東亜グラウト工業/管路最適化2ソフトを横浜市に試行導入、上下水道管路耐震化を加速

2025年6月9日 技術・商品 [5面]

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 東亜グラウト工業は、上下水道の管路更新計画の最適化を支援する「AssetAdvanced(アセットアドバンス)」と、管網解析モデルを最適化する「Optimizer(オプティマイザー)」の二つのソフトウエアを横浜市に試行導入する。同社が代理店契約する米Optimatics(オプティマティクス)の主力商品で、AI遺伝的アルゴリズムを活用した最新システム。市の管路耐震化計画を大幅に加速し、震災発生時に断水戸数の最小化が期待できる。二つを組み合わせた導入は世界初の試み。
 アセットアドバンスは、AI遺伝的アルゴリズムを用いて管路更新計画の多様なリスクや問題を可視化し、数億通り以上の候補の中から最適な管路更新計画策定を支援する。オプティマイザーは、水の供給(配水)や汚水・雨水の収集(排水)に関わるシステム全体を解析する管網解析モデルや流出解析モデルを最適化する。
 市の管路耐震化計画は「震災発生時の断水戸数最小化」が主な目的。オプティマイザーの導入は市職員の提案だった。「どの水道管から耐震化に着手するべきか」を明確にできる技術を導入したことで、計画の大幅なスピードアップを見込んでいる。
 4月2日に契約を締結し、同中旬から市内3配水ブロックで試行している。9月に中間報告をまとめ、試行の結果を踏まえ、2026年度から市内全域9300キロメートルの管路で展開する予定だ。
 5月16日には東亜グラウト工業の山口乃理夫社長、オプティマティクスのジョシュア・カントーン最高経営責任者(CEO)が市役所を訪れ、横浜市の山岡秀一水道事業管理者に面会した。山岡氏は「断水予測を定量的に示すことができれば、より効率的、効果的に耐震化計画に反映できる」と期待を寄せた。
 山口氏は「人に代わりAIが膨大なデータを基に評価、分析する。横浜市での取り組みは災害への備えと持続的な都市経営を両立する画期的な取り組みであり、全国のモデルケースになれば」と意欲を示した。カントーン氏は「革新的プロジェクトに参画でき光栄。地震リスクの高い日本において、効率的な水道インフラの管理が求められていると考える。新技術の活用で市民の水道に対する信頼を維持することに貢献したい」とコメントした。