三機工業が神奈川県大和市の研修・研究施設「三機テクノセンター」で、産業空調分野の技術・製品開発に力を入れている。実験施設として「極低湿度環境試験室」を新設し、5月に本格運用を開始。製品では既存のクリーンルーム向け空調システム「DOUP」を、大規模クリーンルーム用に改良した新型機を開発した。新保順一取締役兼専務執行役員建築設備事業本部長は「半導体や自動車関係を中心に、産業空調の需要が業績をけん引している。声が掛かった時にすぐに対応できるように集中的に研究し、事業成長を図りたい」と意気込む。
極低湿度環境試験室は、次世代電池とされる全固体電池の製造ラインに要求される、湿度が極めて低い環境をつくり出す空調設備の性能を検証できる。テストルームと内部の低露点ブースで構成。2台の除湿機を組み合わせ、テストルームはマイナス40度露点以下、低露点ブースはマイナス80度露点以下の環境を再現できる。露点温度や電力量のデータを集め、運転条件が露点温度に及ぼす影響や、設備のエネルギー消費量を可視化できる。
産業用除湿機では吸着剤にシリカゲルなどを用いた除湿ローターを搭載しているが、除湿ローターから水分を取り除くために膨大なエネルギーを消費する点が課題となっている。三機工業は新試験室を活用して極低湿度と省エネを両立する独自技術を確立し、営業展開の拡大を目指す。
大規模クリーンルームに対応した空調システム「BroDOUP(ブロードアップ)」は従来機に比べ配置の自由が利き、効率良く運転できる点が特徴だ。
クリーンユニットは天づり型と床置き型を用意。天づり型は下向きに冷風を吹き、気流が床面に引き寄せられるように流れる「コアンダ効果」によって冷風を床面の水平方向に流動させ、広範囲に温度成層型のクリーンエリアを構築する。クリーンルームの利用面積を広く取れる。床置き型は天づり型と同様にコアンダ効果を利用するが、冷却コイルと冷水配管を生産装置から離して置くため、装置が水にぬれる危険性を低減できる。施工も容易という。
両型とも、施設内にある他の装置の配置変更に影響されにくい。温度成層を形成することで清浄な空気を効率的に利用するため、換気回数も減らせるという。
ブロードアップの開発では、関連特許を6件取得した。今後は三機テクノセンターに設けたブロードアップの設備を利用し、クリーンルーム関連の技術開発をさらに進めたい考えだ。