回転窓/知る権利の危機と報道の責任

2025年12月3日 論説・コラム [1面]

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 トランプ米政権がホワイトハウスの公式ウェブサイトに、「偏向している」と見なした報道機関や記者を名指しで非難するページを設けた。レビット大統領報道官は1日の会見で「メディアに責任を取らせる」と述べた▼国際ジャーナリスト団体・国境なき記者団の2025年版「世界報道自由度ランキング」によれば、対象180カ国・地域のうち米国は昨年より二つ順位を下げ57位となった▼世界では戦争や紛争が相次ぎ、各国で政治的圧力も強まっている。環境の悪化が報道の自由度を押し下げ、民主主義の根幹である「知る権利」が脅かされつつある▼報道の自由は公正で正確な情報を伝える責任を前提に保たれる。だが不都合な事実を避けたり、批判対象に過度に攻撃的になったりする姿勢が見受けられることも否めない。日本の報道自由度は米国を下回る66位で、先進7カ国(G7)中最下位▼国際情勢を巡る報道でも、根拠の乏しい主張を繰り返すことで、それがいつの間にか「真実」として受け止められる危険がある。言論弾圧は論外だが、報道機関は自らの信頼性を支える倫理意識をより研ぎ澄ます必要がある。