◇1000ダムで容量再編の可能性 昨年10月に日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)水循環委員会がまとめた提言は、流域ダム群の治水・利水容量の再編と、ダム運用の高度化により流域ダム群の治水・利水機能の「全体最適」を目指している。ダム運用のパラダイムシフトと言えるもので、気候変動に伴う激甚な水害や異常渇水、水・河川環境の悪化などに対する対策の強化と、再生可能エネルギーである水力発電の増強という喫緊の課題への対応を提案している。 気候変動は国内だけでなく、世界的な規模で社会・経済活動に大きな影響を与えている。国内を見ても、毎年のように激甚な水害が発生する一方、少雨による異常渇水も各地で起きている。高い確率で発生が危惧されている南海トラフ地震や首都直下地震などの巨大地震時に、十分な水供給が確保できるかという議論はほとんど進んでいない。 カーボンニュートラルの動きも鈍い。政府は2020年に、50年までに温室効果ガスの排出をゼロにすることを明示したが、省エネ化の動きはあるものの、非化石燃料化への転換は遅れている。DXやAIなどの進展に伴い、電力需要は今後増加が予想されており、再生可能エネルギーへの取り組みをより加速させなければならない。 昨年2月に出された第7次エネルギー基本計画では再生可能エネルギーの割合を40年までに4~5割程度(23年度の構成比22・9%)に引き上げ、水力発電の増強(23年度7・6%↓8~10%に)も打ち出している。 気候変動によって引き起こされる洪水や渇水は、降雨の極端な現象で起こることから、その変動を調節することが対策の基本となる。ダムは本来、降雨を貯留・調節し、治水・利水を行う。ただ、ダムの運用はこれまで、一定のルール下で個々のダムで実施し、いわば「個別最適」という形で進められてきた。 提言はダムの運用を個々のダムではなく、流域ダム群に広げ、流域内での「全体最適」を目指し、ダムの有する変動調節機能を最大限生かす。具体的には流域ダム群に対し、それぞれのダムの特長を調べ、例えばこのダムは「治水効果が高い」あるいは「利水効果が高い」などを評価し、治水・利水容量の再編を行う。 同時に個々のダムでの貯水池運用の高度化や治水容量を活用して流水を貯留し利水を強化する「危機管理容量」を創設する。こうした施策を展開することで、気候変動に対応した洪水の調節機能を高め、揚水発電を含めた水力発電量の増強や異常渇水に対応した水供給の備えを充実させる。 国内には現在約2800のダムがある。提言ではこのうち約1000ダムで、容量再編や高度運用による機能強化の可能性があると分析。具体的には電力ダムも含めた複数ダムで運用の高度化やダムのかさ上げ、洪水放流設備の増強、放流管・ゲート・発電設備の新増設、逆調整池の整備改造などを行い、各ダムが連携することで、ダムのポテンシャルを最大限引き出し、治水・利水のレベルを一層高める。 さらに、利根川流域をモデルに流域のダム群の治水容量・利水容量の再編や高度運用、危機管理容量を行った場合のその治水・利水効果を評価するとともに、可能な水力発電量も試算している。次回以降、提言内容をさらに詳細に紹介していく。 (関克己・河川財団、越智繁雄・大成建設)






