回転窓/民話と滝と国立公園

2026年3月16日 論説・コラム [1面]

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 古くから信仰を集めてきた熊野の「那智大滝」(和歌山県那智勝浦町)には、「クジラとモグラ」の民話が伝わる▼お坊さんが荒行のため滝へ向かう途中、困っていたクジラとモグラを助ける。滝に着いたものの滝つぼの水が多くて近寄れずにいると、今度はそのクジラとモグラが助けてくれるという話だ。南紀熊野ジオパーク推進協議会が作成した絵本に収められている▼国立公園制度は2031年に100年を迎える。これを記念し、財務省は24年から国立公園ごとの図柄が付いた銀貨幣の発行を始めた。26年度前半に販売される一つが「吉野熊野国立公園」。那智大滝のほか「オオダイガハラサンショウウオ」「シロヤマザクラ」が描かれている▼生物多様性の損失を反転させるネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に向け、国立公園は中核拠点となる。地域からの取り組みも注目され、1月には那智勝浦町とJESCOホールディングス、日本自然保護協会の3者が連携協定を結んだ▼クジラは「水」、モグラは「土」を連想させ、どちらも生物多様性には欠かせない存在だ。民話が語る共生の大切さは、これからの時代を思わせる。