BIMの課題と可能性

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BIMの課題と可能性・82/樋口一希/積水ハウスの先駆的BIM・1  [2015年9月24日]

設計者が住宅の設計を行う際の手順と、それをシステム化した概念図(元図より一部抜粋)

 住宅メーカーの「究極のBIM」。マンション専業メーカーの長谷工コーポレーションの事例に続き、積水ハウスのBIMの歴史的な変遷、到達した「今」と目指している「近未来」について報告する。


 □パソコンCAD普及前夜にも関わらず積水ハウスのAUDESEIに潜在していた先駆的BIM概念□


 「建築とコンピュータ」誌の取材で積水ハウスを訪問したのは1982年中頃だった。パソコン用2次元CADも普及前夜の時期に、積水ハウスでは、汎用大型コンピュータ上で稼働する建築CADシステム「AUDESEI(※)」を開発し、運用していた(実際に見学したのはAUDESEI-III)。

 設計者が住宅の設計を行う際の手順と、それをシステム化した概念図のイラストをはっきりと覚えている。そこには「人間が頭の中でイメージするように、コンピュータ内に3次元ソリッドモデルを作ることで、その表現である製図、積算を自動化するシステム」「これにより製図、積算手間を省くという大幅な省力化を可能にした」「お客様に対しては外観を中心とした情報を多量に短時間で提供する」と明記されていた。

 『建物構成データ』を引用して営業担当または設計者が『操作(設計)』すると、『家モデル』が構築され、そこからは『製図』『積算』が実行され、成果物として『形状表示』『図面』『見積書』が作成できるとも付記されていた。

 データベース上のデジタル化された『I』=Informationと連動し、2次元図面(データ)を自動生成し、積算にも援用、建築主への見える化も行う。まさにBIMそのものであり、この概念図は、その後の「建築とコンピュータ」+BIMの調査、取材時に常に思い描くものとなった。


 □潜在していたBIM概念はHIMへと深化□


 入力は、タブレット上に住宅プラン=間取り図を描いていく方法を採用していた(後にはマウス入力)。女性オペレータが間取り図を描くと、画面上には3次元の外観パースが出現した。現在のBIMソフトの3次元表現と比較すると、ポンチ絵のように粗いものだが、ここまでできるのかと、CAD・CGシステムの可能性に驚きを覚えた。

 その後、同社は、98年までワークステーション版のAUDESEI-IIIの運用を続け、98年からはSIDECS(※)へとシステムを深化させていった。2011年からは、新SIDECSを導入、潜在していたBIM的コンセプトをより鮮明にHIM(※)として内外に明示した。

 現在、SIDECS上に構築された邸別情報と部材情報による共通プラットフォームをベースにして全社規模で独自のBIM+HIMが稼働している。具体的には、支店・営業所123カ所、展示場419カ所、SIDECS(プレゼン)3711台=2万3125件/月、SIDECS(実施設計)3286台=17万4000件/月の運用実態となっている。


 □建築主に近い工程の最初期=営業段階で描く間取り図からBIM+HIMの「家モデル」を構築□


 82年の取材時、女性オペレータがタブレット上に間取り図を描いていたのを思い出す。開発担当者に「希望されたお客様に間取り図を描いてもらうことはありますか?」と少しばかり突拍子もない質問をしてみた。試験的かつレアケースだがあるとの回答。オペレータがAUDESEI-IIIを操作し、あまりにもスムーズに間取り図を描いていたので、「設計とは誰がするのか」と再考せざるを得ないほど、究極のシステム化が進行していた。

 入力の最初期に、間取り図を描くという住宅設計の従来手法をあくまでも踏襲、3次元モデル構築は一切意識せずに、邸別情報と部材情報からなる「家モデル」が構築できる点が、積水ハウスのBIM+HIMの優れた独自性であり、その後もシステムの成長とともに継承されていった。

 ※AUDESEI=Automatic Drafting and Estimation System in Sekisui

 ※HIM=House Information Modeling+ House Information Management

 ※SIDECS=Sekisuihouse Integrated Design System for Customers Satisfaction。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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