BIMの課題と可能性

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BIMの課題と可能性・164/樋口一希/小規模工務店のBIM・1  [2017年4月11日]

ARCHITREND ZERO画面例

 地域に立脚した建設会社として活動を続け、高い評価を受けている福登建設(福井市花堂北)。他社に先駆け、情報のデジタル化に着手、ドローン採用やVR体験ルーム設置にも挑戦するなど、最新鋭のICTの徹底活用を通して業務革新を追求している。


 □「小さなBIM」ともいえる住宅専用CADシステムの「ARCHITREND ZERO」を中核的に運用□


 「ARCHITREND ZERO」(福井コンピュータアーキテクト)は、間取りや屋根などの基本データを入力して3次元建物モデルを構築、法的規制のチェックから各種図面や申請書類、建築CGパース作成までを行い、直近では、新省エネ基準適応のための外皮計算の自動化、ARCHITREND VRへの連動も実現している。構造設計においては、構造図の作成、プレカットデータの作成および性能表示制度における構造評価はもちろん、許容応力度法による構造計算も行う。

 国土交通省のサイトによると、16年10~12月の確認申請件数は14万2586件で4号建築物は10万4965件だ。申請件数の大半を占める一般的な規模の木造一戸建て住宅を主な対象とし、S造・RC造にも対応する「ARCHITREND ZERO」を「小さなBIM」として再定義する。


 □「空間を仕切る道具をBuilding Elementと呼ぶ」=BIM的概念からシステム建築へ射程を延ばす□


 3月27日のインフォマティクス創立35周年記念講演会。建築構法学の第一人者である東京大学名誉教授の内田祥哉氏は、講演「和小屋の知恵と現在の和小屋(和構法)」において、「畳モジュールへの再認識」と「日本建築、中でも町家は、移築や改修にも適した最も優れたシステム建築」とし、昨今の空き家問題にも普遍できる論を展開した。

 日本電電公社時代からモジュールに強い関心を持っていた内田氏は、東京大学工学部に移籍後、「Building Element(BE)論」(※1)を発表、「『建物の各部は、空間の仕切りとして価値づけられている』と仮定し、『空間を仕切る道具をBuilding Elementと呼ぶ』事にする」と論じた。筆者が内田氏を訪問したのは、83年5月刊『建築とコンピュータ誌』第2号編集時であった。一品生産である建築において標準化できるBE(Building Element)をどのようにデータベース化するか。薫陶を受けたBIM的概念の射程は、「ARCHITREND ZERO」を含め、昨今のBIM状況にまで伸延していたといえる。


 □「小さなBIM」の運用に際しても最も重要な要諦となる「3次元」と「データベース」□


 80年代後半からAutoSketchや花子(※2)を用いて2次元図面のデジタル化を進める中で、再利用できるデジタル情報の優れた加工性に気付いた福登建設では、社内外への象徴的なアピールもあり、製図板を廃棄した。93年ごろ、「ARCHITREND ZERO」の前身である「アーキトレンド11」に衝撃を受けて導入するが、その際の最も重要な要諦が、今に引き継がれている「3次元」と「データベース」であった。

 「アーキトレンド11」では、高さ方向のデータを参照することで表示は2次元だが3次元パースを作成した。着色やレンダリングもできず、リアルタイムでは動かなかったが、顧客への「見える化」効果は絶大で、打ち合わせの形態も劇的に変化していった。

 情報のデジタル化において、2次元CADでは「絵を描いていた」が、BIMではI(Information)=各種部材を「3次元」で「データベース」登録することで建物を経済価値化(見える化)するメリットが明らかとなる。福登建設は、勘と経験への依存から「業としての建設」へと急速に脱皮していく。

 (※1)出典:内田祥哉・宇野英隆・井口洋佑「Building Elementの定義に就て」(「日本建築學會研究報告」No.48・1959:P81~84)

 (※2)AutoSketchはオートデスク社、花子はジャストシステムの2次元製図システム。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)

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