BIMの課題と可能性・166/樋口一希/小規模工務店のBIM・3

2017年4月18日 トップニュース

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 「小さなBIM」=「ARCHITREND ZERO」(福井コンピュータアーキテクト)のもうひとつの要諦である「データベース」。小規模組織においても実現可能な業務革新の「現在」を福登建設の事例に基づき報告する。


 □組織ごとに特化したデータベースを組み込んで「小さなBIM」としてI=Informationを利活用□


 筆者の編集者としてのスタートは『積算ポケット手帳』(建築資料研究社)だ。改定時には誌面をコピーして赤字をボールペンで記入した。非効率極まりない。パソコン雑誌で米国ではDTP(Desktop publishing)が普及し始めたと知った。あらゆる情報はデジタル化されるに違いない。「建築とコンピュータ」への接近は編集のデジタル化への思いが端緒となっている。

 建築専用CADは、製図目的の2次元CADとは異なり、当初から積算システムを組み込むなど、設計業務全般を支援する一貫システムとして長い歴史を持ち、独自の発展を続けてきた。建築専用CADの内部に、運用組織ごとに特化した「積算ポケット手帳」的なデータベースを組み込み、「小さなBIM」としてI=Informationを利活用する。三十数年前に、妄想したように「夢見たこと」が実現していた。


 □「建てるように創るように」をデジタル的に再現する「実務主義のマスター」を徹底運用□


 福登建設では、二十数年間にわたるノウハウをベースにデータベースの根幹をなす各種マスターを独自に「実務主義のマスター」へとカスタマイズしている。石こうボードの事例でみてみる。一般的には、3次元モデルからボードの貼り付け面積を測定し、1枚当たりのボードの面積で割って枚数を算出するようマスター登録する。

 福登建設では、ボード枚数とともにボード全体の面積も(逆)算出し、合わせて現場で割り付けた際の危険率も見切って最終的なボード枚数+面積を算出できるようマスター登録している。施工費算出にも細かな配慮がなされている。ボードの施工費はマスター登録できるが、2階までの荷揚げ費の項目は仕様上、用意されていない。(独自ノウハウなので詳細は不可だが)2階のマスターを別途、作成して対応している。

 『積算ポケット手帳』編集時、材工単価、複合単価を掲載するため工務店や各種工事組合に通い、単価算定の方法を取材した。福登建設では、デジタル的に「建てるように創るように」を再現するべく「実務主義のマスター」を登録している。


 □大量生産+個別化でのマスカスタマイゼーションで競合他社と対峙し市場からも信頼獲得□


 「お客さまは不安を抱えてやってくる。変更は『ARCHITREND ZERO』で行い、瞬時に図面や3次元パースで確認してもらう。重要なのは設計変更が各種マスターと連動しているため、具体的な積算根拠に基づき、フェアにお互いが値踏みできることだ。大まかな『経験と勘』から脱却でき、お客さまから信頼を得ることができる」(福登建設常務・清水榮一氏)

 建築は一品生産だが、躯体など標準化できる部分もある。市場ニーズには、データベース内の内装・設備機器などを常にリフレッシュして可変的に対応する。大量生産と特注・個別化を両立させるマスカスタマイゼーションによって福登建設は主たる競合相手の住宅メーカーとも充分に対峙できるノウハウを確立した。

 外張り断熱と内断熱双方のメリットを得られる遮断熱シート「SDN-SHHET〈R〉」を用いた独自の遮断熱工法を開発し、市場供給、遮熱+断熱効果の測定も赤外線サーモグラフィーカメラで「見える化」している。直近では、民生用ドローン市場で世界シェア7割を占めるDJI社の日本法人から「DJI Mavic Pro」を導入、竣工検査や改修工事の調査に使い始めた。ここでもBIMの先に向けた動きが顕在化している。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)