BIMのその先を目指して・59/樋口一希/RC造一戸建て住宅の電子確認申請

2018年7月5日 トップニュース

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 注文住宅専門の建築設計事務所アーネストアーキテクツと建築確認審査機関の日本ERIでは、BIMソフト「ARCHICAD」(グラフィソフトジャパン)+BIMビューアー「BIMx」を使用して電子申請により鉄筋コンクリート造一戸建て住宅の確認済証交付に至ったと発表した。

 □電子化されたBIMのI=Informationの利点を生かしてベンダーが進める確認申請への援用□

 BIMソフトによる建築確認申請については前連載第130~132回で建築設計事務所フリーダムアーキテクツがBIMソフト「Revit」(オートデスク)を用いて4号建築物を対象に確認済証受領に至ったと報告、本連載第35回でも3階建て木造住宅まで拡張したと報告している。今回の試みは「ARCHICAD」による確認申請への援用範囲を鉄筋コンクリート造一戸建て住宅へと拡張したものとして注目できる。BIMソフト「GLOOBE」のベンダーである福井コンピュータアーキテクトでも近々、確認申請への対応を発表するとの情報を得たように確認申請への援用はさらなる進展を続けている。
 本スキームでは大塚商会がBIMワークフローを開発、ベンダーとしてグラフィソフトジャパンがBIMワークフローに関するノウハウ提供と技術支援を行っている。

 □BIMソフトの設計モデルをBIMxデータ化して審査機関の電子申請受付WEBシステムに送信□

 確認申請の流れは、図1「BIMビューアーを用いた電子申請フロー」にあるように事前相談と確認申請の2段階に大別できる。最初に設計事務所が「ARCHICAD」で作成した設計モデルをBIMx用のデータに変換して審査機関の電子申請受付WEBシステムに提出、審査機関が設計モデルを使って確認する。質疑が発生した際には当初の工程を再度行い、「了」となった段階でBIMxデータからその他書類一式などを作成する。設計事務所は「了」となったBIMxデータに電子署名を行い審査機関に提出、審査機関では本審査へと移行する。その後、消防署からの同意を得て設計事務所に対して確認済証(紙)と審査済図書(PDFデータ)を交付する。
 求積図の確認手法について図示したのが図2「申請用3D(建築面積)」だ。敷地形状を表す図面上に3次元建物モデルが立ち上がるように表示できるため2次元と3次元の相関関係も視認しながら面積算定が容易に行えるのがよくわかる。

 □BIMソフトの導入がなくともBIMのI=Informationを確認申請に援用できるBIMxの優れた優位性□

 今回のスキームの優位性はBIMビューアー「BIMx」によって担保されている。「BIMx」は無償版と有償版(BIMxPro:6000円)として安価に提供されるため審査機関側でも「ARCHICAD」を導入する必要がない。「ARCHICAD」の設計モデルをBIMx用に変換するとデータ量が軽量化できるのでシステムの運用面でも負担が少ないし、BIMxデータは編集できないため審査中の不可抗力による改悪または意図的な改ざんが不可能だ。
 BIMxデータが設計モデルの内包するBIMのI=Informationを保持しているため「ARCHICAD」本体がなくとも確認申請への援用を実現できた。同様にI=Informationを援用することで設計の見える化にとどまることなく、竣工前の完了検査から稼働後のFM業務に至るまでさまざまな可能性が広がる。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)