BIMのその先を目指して・60/樋口一希/日建連が施工BIM事例集2018公開

2018年7月12日 トップニュース

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 日本建設業連合会(日建連)では7月4日付で「施工BIMのスタイル 事例集2018」を公式サイト上で公開した。建築生産委員会IT推進部会BIM専門部会が16年に続いて編さんしたもので掲載企業数を増やすとともに、個々の取り組み事例ごとに成功要因、工夫点、効果、次回改善点、生産性向上への貢献度などを共通のフォーマットと図版を用いて読みやすく編集している。

 □元請の7割がBIMに取り組んでいることから施工BIMは普及期を終えつつあると実感する□

 BIMの黎明(れいめい)期での実験的な運用から施工現場での実利に直結する運用に至るまで挑戦を続けている実務者自らが編さんしたものであるため施工BIMを取り巻く直近の状況を正確に反映している。掲載数は元請が18社で、専門工事業者については鉄骨FAB4社、設備サブコン4社、昇降機メーカー2社、鉄骨階段メーカー2社、サッシメーカー4社、金属建具メーカー1社、建具製造2社、とび・土工1社と多岐にわたっている。事例数も前回の元請+専門工事会社79から99事例と増加している。
 回答を寄せた元請54社のうち、施工BIMに取り組んでいるのが43社と67%に及ぶことから「BIMは離陸して巡航高度に至った」=普及期を終えつつあるとの推論は実証されたと考えられる。

 □課題としてのBIMモデルからの図面生成が収束するとともにBIMモデル先行の優位性顕在化□

 「事例集2018」で最初に目に入ってきたのは〔05.成功の要因:〈9〉BIMモデルの作成順序〕において、前回の調査結果では図面先行がBIMモデル先行を上回っていたが、今回は明らかにBIMモデル先行が図面先行を上回る点だ。
 BIMの黎明期にはユーザーも2次元CADによる図面作成に重点を置いていたため、BIMの3次元モデルからいかにして現状に近似して図面を生成するのかが主たる課題にもなっていた。そのためBIMベンダーも図面生成能力を競っていたが、課題の収束と同時に、関係者間の合意形成、干渉チェック・納まり確認、BIMモデル合意形成/承認などBIMモデル先行の優位性が明らかとなっている。
 BIMの3次元モデルの運用メリットは、当初、建築主への見える化、関係者間での見える化、技術者自身にとっての見える化として結実したが、直近では関係者間での合意形成の質的向上によって施工精度の改善や工数の手戻り削減など実利に直結し始めている。

 □BIMによる建築主・設計者との合意形成+全関連工種間の調整会議が施工BIMの成功要因□

 施工BIMの成功要因としては、「元請のリーダーシップと関係者の積極性」「取り組み目的・スケジュールの明確化」に加え、「BIMモデル先行としたワークフローの実施」「建築主・設計者の参加による調整会議で合意」「大部屋方式による調整会議・関連工種の全員参加」などが挙げられている。
 施工BIMの課題としては「教育、データの軽量化」「仮設ライブラリーの不足」などが挙げられ、期待としては「施工BIMによる生産性の向上を多くの作業所で実感」とされている。実務者の編さんによる実務者のための「事例集2018」の面目躍如である。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)