BIMのその先を目指して・61/樋口一希/大林組のスマートビルマネジシステム

2018年7月19日 トップニュース

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大林組では、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)・人工知能(AI)技術を用いて働く人の「快適性」「健康」「利便性」「安全性」などウェルネスの向上を図りつつ、最適な建物管理を実現するスマートビルマネジメントシステム「WellnessBOXR」を開発した。大林新星和不動産が所有するテナントオフィスビル「oak神田鍛冶町」に実装し、17年12月からの実証運用で効果を確認済み。

 □建物利用者への最適な環境の提供とともに細やかな建物制御による省エネルギーを実現□

 製造業を中心に発展してきたIoT技術を建築の情報化に援用することで、日々、ダイナミックに稼働する建築物のさまざまな挙動をリアルタイムで捉えることが可能となった。
 「WellnessBOXR」は、IoT技術を用いて建物設備のセンサーなどから得られる建物内外の多様な情報+建物利用者一人一人の快適さに関する情報+ビーコン(※)による建物利用者の位置情報をインターネット経由でクラウドに集約してAI技術を活用することで、建物利用者への最適な環境の提供と、クラウドに蓄積した情報を活用した細やかな建物制御による省エネルギーを実現する。導入によって建物利用者の要望に応じて遠隔地からでも建物設備の設定が調整できるため建物管理者の負担も軽減される。
 ※ビーコン:Beacon=無線LANに対応した携帯型の信号発信機。語源は狼煙(のろし)や篝火(かがりび)といった位置と情報を伴う伝達手段。

 □エネルギー消費量についても対BELS(建築物の省エネルギー性能表示制度)で約5%削減□

 建物利用者のウェルネス向上を図りつつ、最適な建物管理を実現するため、建物設備に標準装備されているセンサーなどから取得した約6000点に及ぶ管理情報をオープン化し、建物利用者のビーコンによる位置情報や快適感申告の情報と合わせてクラウドに集約することにより、設備の最適制御を行っている。
 照明の人感センサーを利用した空調の制御、建物利用者が携帯するビーコンの情報を利用した照明の減光制御を行うなど、従来は困難であったきめ細かい環境制御によって、建物利用者一人一人に優しい快適環境の提供を実現している。エネルギー消費量についても対BELS(※)約5%削減を確認している。
 ※BELS:Building-Housing Energy-efficiency Labeling System=「非住宅建築物に係る省エネルギー性能の表示のための評価ガイドライン(2013)」が国土交通省において制定され、当該ガイドラインに基づき第三者機関が非住宅建築物の省エネルギー性能の評価および表示を的確に実施することを目的に制定された建築物の省エネルギー性能表示制度。

 □スマホなどの同一画面からワンストップサービスを受けられ管理業務の負担軽減につながる□

 「WellnessBOXR」では、建物設備を直接制御するBAS(Building Automation System)を建物内に設置しているが、稼働情報や制御情報は建物利用者の申告情報と同じくクラウドに集約される。建物利用者はインターネットにつながったスマートフォン、タブレット端末、パソコンなどを通して同一画面からワンストップでさまざまなサービスを享受でき、遠隔地からの利用も可能なため、建物管理者にとっては管理業務の負担軽減につながる。
 新築、既存を問わず複数の建物に対して利用できるため、建物所有者は同様のサービスを低コストで導入することが可能だ。稼働状況などのさまざまなデータを建設時のBIMモデルを活用した建物情報プラットフォーム「BIMWillR」(大林組開発)と共有することで、機器の劣化状況や更新時期の予測精度を向上させることができ、故障する前にメンテナンスや更新を行う予防保全のさらなる効率化が実現する。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)