BIMのその先を目指して・69/樋口一希/BIMによる建築確認申請を巡る動向

2018年9月27日 トップニュース

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 本稿でも追跡して報告しているように、建築確認審査機関、BIMソフトベンダーなど関連プレーヤーによるBIMによる建築確認申請実現への挑戦が続いている。直近の動向を探り報告する。

 □BIMによる建築確認用2次元図面の効率的作成と確認申請用テンプレート作成に取り組む□

 日本ERIと日本建築センターは、建築確認申請業務の円滑化、効率化を図るため委員会を発足させ、BIMを活用した建築確認申請の課題解決のため検討に着手すると公表した。
 委員会は委員長を松村秀一東京大学大学院教授、委員を学識経験者、建築研究所、指定確認検査機関で構成、オブザーバーとして国土交通省などが参加する予定で、BIMベンダーなどにも協力を呼びかける。
 当面はBIMモデルを活用した建築確認用の2次元図面の効率的な作成、建築確認における的確で円滑な審査のための確認申請用テンプレート(※)作成、確認申請用テンプレート作成に必要な属性情報を定めるためのガイドラインの作成を目指している。将来的には、BIMを活用した建築確認のさらなる円滑化や国際協調などに取り組む。
 ※確認申請用テンプレート=BIMモデルから作成する建築確認に必要な図面表現標準。

 □わが国ではBIM活用の建築確認・検討体制と検討内容について解決すべき多くの課題内包□

 海外ではシンガポールが15年から5000平方メートル以上の建築物の確認申請にBIMデータの提出を義務付けているし、英国、ノルウェーでもBIM利用のガイドラインの策定などが進行している。
 国内では16年にBIMデータを使用した確認申請手続きによる4号建築物の確認済証交付の事例(住宅性能評価センター)が周知された。3月には2000平方メートル以上の非住宅建物においてクラウドを利用してBIMデータにより事前審査した事例(日本建築センター)、6月にはBIMビューアーソフトを使用した電子申請によるRC造戸建て住宅の確認済証の交付の事例(日本ERI)などが公表されている。
 一方でわが国のBIM活用の建築確認と検討体制、検討内容については解決すべき多くの課題も内包している。BIMモデルを用いた建築確認の2次元図面の効率的な作成や建築確認における的確で円滑な審査のためには、確認申請用テンプレートの作成と確認申請用テンプレート作成に必要な属性情報を定めるためのガイドラインの作成が喫緊の課題だ。法令改正に伴うガイドラインの見直しなどの継続的運用をはじめ、BIMによる建築確認の円滑化を見据えた確認審査用BIMビューアーソフトウエアのあり方や国際協調など、合わせて取り組むべき課題がある。

 □10月に委員会を発足させ19年度には産・学・官の関係機関と団体による推進協議会を設立□

 今後の検討体制および検討内容について18年度は10月には委員会を発足させ、その際に合わせてBIMベンダーなどに協力を呼びかける。検討内容は確認申請用テンプレートの検討、ガイドラインの検討、BIMを活用した建築確認の継続的運用、さらなる円滑化方策などとし、事務局は日本建築センターと日本ERIに置くとされている。
 19年度には、BIMを活用した建築確認の継続的運用とさらなる円滑化の課題解決、国際協調などのため、産・学・官の関係機関と団体により構成する推進協議会を設立し、所要の活動を行う。具体的には、学識経験者、特定行政庁、指定確認検査機関、設計事務所・建設業・住宅産業などの団体に幅広く参加を呼びかける。推進協議会の発足は4月の予定とされている。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)