BIMのその先を目指して・70/樋口一希/一貫構造計算とBIMとのデータ連携、BIM確認申請

2018年10月4日 トップニュース

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 BIMの普及が現実味を帯びる中、ソフトウエアベンダーも革新的なチャレンジを続けている。今回は一貫構造計算とBIMとのデータ連携を実現したケースと、建築確認申請の実務利用に舵(かじ)を切った国産BIMソフトの現況を報告する。

 □一貫構造計算とBIMとの新しいデータ連携により構造計算で必要な荷重と計算条件も共有可能□

 建築のデジタル分野で老舗の構造システムでは、一貫構造計算ソフト「BUS-6」とBIMソフト「Revit」が一つの建物データ(Revitプロジェクト)を共有し、整合性を保持しながら構造設計を進めることができる環境を実現した。これによって建物データだけでなく構造計算で必要な荷重と計算条件もBUS-6とRevitで共有可能になった。
 BIMによる3次元建物モデル=建物形状の共有で整合性を保持できるので、BUS-6で作成・編集した建物形状をRevitで開くとともに、Revitで作成・編集した建物形状をBUS-6でも開くことができる。BUS-6はRevitから起動でき、BUS-6の作業終了後に自動でRevitに戻る。そのため両ソフトウエアを利用することでBIMモデルと構造計算モデルを容易に作成することが可能だ。BUS-6のオプションプログラム「+Revit Op.」が必要で単独では稼働しない。
 構造システムでは、これまでも一貫構造計算ソフトBUS-6と基礎構造計算、構造図作成、耐震診断、概算数量計算ソフトなどで一つの建物データを共有し、設計に必要な構造に関する業務を共通の建物データでできる仕組みを作るとともに、任意形状立体フレームの弾塑性応力解析ソフト「SNAP」等とのデータ連携も強化し、各種ソフト間のデータ連携を積極的に進めてきた。今回の「一貫構造計算とBIMとの新しいデータ連携」は、それら活動の一環として各方面から注目を集めている。

 □申請者と確認検査機関の双方にとって多くのメリットがある「BIM確認申請」機能を強化□

 福井コンピュータアーキテクトでは、BIMモデルによって審査を受ける建築確認申請の対応を目指した機能強化と、UAV(ドローン)などで取得した3次元点群データとの合成を実現した国産BIM建築設計システム「GLOOBE 2019」を10月17日に発売する。
 本稿でも報告したように「BIM確認申請」は、申請者と確認検査機関の双方にとってさまざまなメリットがあることから、その実現が期待されている。新バージョンでは、「GLOOBE」で作成されたデータによる「BIM確認申請」を可能にするための機能強化を図っている。
 ・「BIM確認申請」対応機能強化=建築基準法の機能と自動作図機能を生かした機能追加や拡張を行い、国内仕様を強化。法的区画の性能編集コマンドを追加し、柱・壁・建具の区画種別情報の確認と編集が可能。
 ・モデル比較の拡張=「GLOOBE」のモデル(意匠)と構造モデル(STBridge)・施工モデル(IFC)のデータを合成し、柱・壁・梁・スラブの不整合チェックが可能。
 ・4Dシミュレーションの拡張=工事区分(施工ステップ)ごとに色分け表示した状態や指定日での施工状況を表示した状態でデータの編集が可能。
 ・3次元点群データ読み込み=周辺地形の点群の利用、既存構造物の点群の重ね合わせなど、点群とBIMデータを合成しさまざまな検討やプレゼンテーションを実現。読み込んだ点群データは、レンダリング(CGパース)やVR(バーチャルリアリティー)にも出力可能。
 ・景観地形データの読み込み=国土地理院が公開する地図の標高を読み込み、正確な地形データと写真画像によるリアルな景観を表現可能。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)