BIMのその先を目指して・73/樋口一希/i-Conの中核担う建機ベンダーの動向

2018年10月25日 トップニュース

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 10月16日から19日まで開催されたbuildingSMART International Standards Summit,Tokyoで登壇した国土交通省の森昌文事務次官は、i-Constructionへの取り組みと成果などを紹介、「Society5.0の実現に向けて3次元データの流通や社会への実装に対して先導的活動を進めていきたい」と語った。国交省が省を挙げて推進するi-Constructionの中核を担う建設機械ベンダーの直近の動きを報告する。

 □5Gでの建設機械遠隔制御の実証実験でほぼ死角のない自由視点での遠隔モニタリング検証□

 OKIでは、コマツの建設機械の遠隔制御システムに車両周辺の俯瞰映像モニタリングが可能なシステム「フライングビュー」を活用した実証実験を「コマツIoTセンタ東京」(千葉市美浜区)で開始、建設機械の遠隔操縦の早期実用化を目指す。コマツが先行して実施している5Gによる建設機械の遠隔制御の実証実験に「フライングビュー」を適用することで、ほぼ死角のない自由視点での遠隔モニタリングの検証を新たに実施する。
 「フライングビュー」は、建設機械に搭載した4台のカメラ+映像合成部+送受信部で構成。カメラ映像の合成を映像処理能力の高いFPGA(※)上で行うことにより、小型省電力のシステムでの大容量高画質の映像処理をリアルタイムで実現し、建設機械の全周囲で、ほぼ死角のないシームレスな広域エリアの俯瞰映像モニタリングを可能とする。
 コマツの部分映像モニタリングでは、建設機械の前後およびブレード部を撮影する高精細カメラで作業部分の状況把握を実施。これらの俯瞰および部分映像は「コマツIoTセンタ東京」の建設機械から、遠隔地の「コックピット」に伝送され、遠隔操縦者の建設機械の操縦支援に用いる。「コックピット」からは5Gを経由して建設機械へ制御信号を伝送し、低遅延で高速な5G通信の特性による映像と制御信号の双方向におけるリアルタイムな通信の検証を行う。
 両社は実証実験での「フライングビュー」を適用した場合の有効性や課題などを分析し、遠隔操縦の早期実用化に向け、共同で取り組み、合わせて最新技術を用いた建設機械の遠隔操縦の実現により、未来の建設現場における安全性、生産性向上に貢献していく。
 ※FPGA(field-programmable gate array)=製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路。

 □i-Con普及促進へ最新ICT建機の体験型研修施設D-Tech Center開設□

 日本キャタピラーは、ICT体験型研修施設D-Tech Center「Satellite 豊橋」(愛知県豊橋市)をオープンした。土木・建設現場での人手不足や熟練オペレーターの減少といった課題解決のためi-Constructionの普及促進を図り、最新技術への理解とICTに熟知した人材の育成が必須であるとして施設オープンに踏み切った。東海地区の顧客ニーズを基に定期的にICTセミナーやデモンストレーションを開催、建設機械に関する最新テクノロジーの検証や社員研修の場として活用する。
 日本キャタピラーでは、社内でJCMA(日本建設機械施工協会)のi-Construction公式説明者資格取得を推進、社内合格者24人を各地のD-Tech Centerに配置し、どの施設でも同水準の講習を実施できる体制を整えている。顧客、自治体向けに最新のICT建機を使った研修・ICTセミナーを開催、デモンストレーションの見学や試乗体験など、最新のテクノロジー・ICT建機を実際に見て・乗って・学ぶことができる。ICT熟練者の育成や社内インストラクターの養成につなげるため、社員に対しても最新テクノロジーの説明・ICT建機の研修の場として活用、加えてICT建機の機能や最新テクノロジーの検証、機械のコンディション分析、新たなソリューションの開発に取り組んでいる。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)