技・人づくり専門工事業ファイル・14/信号器材(川崎市中原区)

2018年7月10日 トップニュース

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 ◇交通安全による社会貢献/鉄道と道路を二本柱に事業展開

 昨年10月に会社創設70周年を迎えた信号器材(川崎市中原区、前島敏雄社長)は、鉄道と道路を二本柱とする事業展開の中で「安全を通じて社会に貢献する」ことを理念に掲げる。道路標示や標識に関する材料と工事を提供する公共事業の一端を担う役割の中、「交通事故をゼロにすることが究極の目標」とする前島社長は、製品製造と施工の安全性を高めることに徹していく構えだ。
 創業当時は軌道回路に関する部品類を国鉄向けに製造するのを主力事業としていた。1950~60年代には、モータリゼーションの発展を予見し、道路標示・標識など安全施設を製造・施工する事業領域の拡大も図った。標示・標識の事業からさらに領域を広げ、銀行などを得意先とする建築系のサインなども手掛けている。
 売上高は130億円強で推移。製造と施工を手掛ける社員を中心に320人を抱え、グループ全体で400人ほどの陣容。毎年高卒、大卒の社員5~10人程度を定期採用している。このうち工業高校から受け入れる人材は、まず技能工として現場経験を積ませ、資格取得状況などに応じて工事をマネジメントする部門に移行させる。
 富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)を利用した研修に参加させ、所属する全国道路標識・標示業協会(全標協)が実施する登録基幹技能者や道路標識設置・診断士などの資格取得にも会社負担で精力的に取り組めるようにする。ラインの噴射施工など同社が提案する工法の研修でも「富士教育訓練センターを10年以上利用させてもらっている」と話す。
 建設業界で課題とされる入職3年までの離職は少ないものの、「入社7~8年と仕事に慣れてきた段階で相手との折衝に悩み追い込まれるケースがある」という。先輩社員のケアを含め、社員が孤独感に陥ることがないよう雰囲気作りにも気を配っているという。
 2020年東京五輪に向けて建設投資は活況を呈するが、2023~25年に団塊世代が75歳を迎える時期を見据えた戦略を考えることも重要だ。
 その一つが70年の歴史の中で培った技術を生かした事業展開といえる。国や自動車メーカーが主導する形で取り組む自動運転に路面表示・標識の分野でどう貢献していくか。また、高齢化の進展に伴い労働人口の獲得が一段と難しくなる中で、人工知能(AI)を用いて省力化を図りながら、「若者がかっこいいと思うような技術」を用いて社会貢献をすることで社の価値を高めていくことにも力を入れていきたいとする。
 200度くらいの高温で溶かした材料を用いるライン敷設の機械の動力を内燃機関から電気に移行させて安全性を高めることにも取り組んでいる。
 本業の一方で、地域の子どもたちへの交通安全に関する啓発活動を展開するなど、安全な社会に貢献する理念の達成に力を入れる。また、韓国、台湾、マレーシアに拠点を設け海外市場での技術指導などを通じて、諸外国の交通安全を確保する取り組みも積極展開している。(随時掲載)