BIMのその先を目指して・77/樋口一希/アルゴリズムデザインラボの広範な活動

2018年11月22日 トップニュース

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 建築情報をつなぐために必要な役割「BIM Player」として活動するAlgorithm Design Lab.(アルゴリズムデザインラボ)代表取締役の重村珠穂氏の現在を通してコンピュテーショナルデザインの有り様を俯瞰する。

 □ゼネコン設計部でコンピュテーショナルデザイン・ツールを内製的に運用できる人材教育□

 NURBSによる滑らかな自由曲面を用いて3次元モデルを生成する3次元モデリングツール「Rhinoceros」。製造業に出自があり、航空機から医療分野まで広い援用範囲をもつツールだが建築分野への設計(デザイン)支援で脚光を浴びており、海外では10年以上前から建築分野でも一般的に使用されている。
 本連載第42~44回「富士山世界遺産センター」で紹介した建築家、坂茂氏による逆円すい形の3次元曲面の木格子。坂茂建築設計での初期のモデル作成と木格子工事業者での製造段階では「Rhinoceros」が用いられていた。
 アルゴリズムデザインラボは、コンピュテーションの教育・支援活動を通じて建築業界の業務効率向上をサポートするユニークな会社だ。設計者を支援・啓蒙・教育するさまざまな活動を行っており、大手ゼネコン設計部では、設計者が初期段階で3次元モデルによるシミュレーションを多用して複数案の検討を容易にするなど、データドリブンな設計を内製化、標準化すべく支援している。別のゼネコンの設備設計部では、初期段階での環境シミュレーションを迅速に行うための教育・支援活動も進めている。Revitの教育支援のBIM ACADEMYも運営中だ。

 □居住環境の情報を読み取って建築設計を支援する環境シミュレーション「DIVA-for-Rhino」□

 重村氏は「DIVA-for-Rhino」という光・熱環境シミュレーションのための「Rhinoceros」用プラグインの普及啓蒙も行っている。「DIVA-for-Rhino」は、重村氏も在学中にハーバード大学建築学科のクリストフ教授(現MIT教授)によって最新のグリーンビルディング研究に基づいて開発されたもので、その後、Solemma LLCによって継続開発されている。
 DIVAは設計の初期段階で、設計者が光環境のシミュレーションとエネルギー計算ができる。初期の気化設計の段階から環境にも配慮した設計を設計者自ら検討することを可能にする。
 気象データに基づいたシミュレーションでは、解析結果を基にして目標照度などを設定し、年間単位で分析を行う。動的シェーディングシステムでは、シェーディングモデルを作成することなく、理想化されたブラインドの動作を想定できる。
 照明シミュレーションにより制御管理・デザイン戦略に生かすことができる照明のデザイン機能、グレア(眩惑=不快感を伴う眩しさ)の発生をビジュアル化して起こりうる位置とその変化を確認できるグレアの評価機能、ある期間の1平方メートル当たりの日射積算量を算出し、シミュレーションすることもできる放射熱量の測定機能も装着している。
 特筆できるのは居住環境の情報を読み取って、どのような建築を設計するのかという環境シミュレーションが「Rhinoceros」のプラグインによって3次元+動的に見える化できることだ。

 □建物の動的機能をトレースして再構築・編集する「Grasshopper」のプラグインツール提供□

 アルゴリズムデザインラボでは、「Grasshopper」プラグインとして、トラス・フレーム・シェルなどの正確な解析が可能なパラメトリック構造エンジニアリングツール「Karamba3D」、気候解析やエネルギー解析などの環境解析を行うことができる「Ladybug+Honeybee」の代理店や教育支援も行っている。
 Rhino+RevitなどのBIMや解析ソフトと連携するクラウドツールの日本版の開発にも注力し、BIMのツールやテンプレートの作成、導入支援も行っている。先進的なコンピュテーショナルデザインの研究とともに、実務への支援、教育支援も行うアルゴリズムデザインラボの可能性を今後も追跡する。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)